中国共産党の高層は今年に入ってから、外資系企業の経営陣に対して頻繁に好意を示していました。しかし、これらの取り組みは何の効果ももたらさず、外資系企業は香港に上場している中国企業の株式を売却し続け、最近では減資傾向が加速しています。
外資、中国企業の株式を大量売却 ファンド会社も撤退
中国の国務院総理・李強(リー・チャン)氏は3月27日、中国発展フォーラムに参加した外国人に対し、「中国経済はすでにグローバルシステムに深く結びついており、世界環境がどう変わろうと、中国は対外開放の方針を揺るぎなく堅持し続ける」と語りました。
同日、中国商務部(省)の王文涛(ワン・ウェンタオ)部長はアップルCEOのティム・クック氏と会談し、アップルなどの外資系企業に良好な環境とサービスを提供することを約束しました。3月28日、中国の韓正(ハン・チェン)副主席も、クック氏が出席した会議で、「中国政府は各国企業と共に、グローバル産業チェーン・サプライチェーンの安定を維持するために努力する」と述べました。
しかし、外資系企業は、中国共産党高層が示した好意を無視しているようです。シンガポール政府投資会社(GIC)は4月17日、中国電信の株式2038万株を売却し、約8926万香港ドル(約15.2億円)の減資を行いました。GICは今年1月から、6回にわたり株式を売却しており、H株の持ち株比率は9.99%にまで減少しています。H株(エイチかぶ)とは、香港証券取引所に上場している中国大陸で登記している中国企業の株式の銘柄のことで、中国本土外の投資家も取引ができ、香港ドルで取引されます。
中国の大手企業テンセントは、2か月以上にわたる大幅な下落を経験した後、4月21日の午後に一時的に346香港ドル(約5900円)まで下落し、349香港ドル(約6000円)でその日を終えました。こうなった主な原因は、4月12日に大株主のProsus(プロサス)がテンセントの株式売却を加速する可能性があると市場が予想したからです。Prosusは今年1月までに、1億9300万株を超えるテンセントの株式を売却し、持ち株比率は2022年6月の29%から26.9%に減らしています。
近日、ソフトバンクもアリババ・グループの米国預託証券(ADS)約72億ドル(約9600億円)相当を先物取引で売却したことが報じられました。これによりソフトバンクのアリババ持株比率は3.8%にまで大幅に低下し、ピーク時の34%を大きく下回ることになります。
さらに、ファンド会社が中国から撤退するニュースも相次いでいます。世界第二のファンド会社であるバンガード社に続き、管理資産額が690億ドル(約9.2兆円)の米国のファンド会社VanEck(ヴァン・エック)も、中国国内での株式の公募計画を一時停止するとの報道がありました。
また、3月末には、ウォーレン・バフェットが率いる投資会社バークシャー・ハサウェイが、香港上場の電気自動車メーカーBYD(ビュイック)の248万株を5.3993億香港ドル(約92億円)で売却しました。
中国共産党の制度が外資系企業の不安の源
米国在住の経済学者である李恒青(り・こうせい)氏は、4月21日に大紀元に対し、香港国家安全維持法の実施により、香港の「一国二制度」が完全に崩壊し、ほぼ「一国一制度」になり、多くの金融関係者と金融資産が香港から離れたと述べました。
李恒青氏は、「企業家たちは皆、賢明だ。習近平氏が台頭してから10年間、国進民退(こくしんみんたい)を推進し、党の支配を民間企業に深く根付かせることで、外資系企業や投資者に非常に危機感を感じさせている。さらに、3年間の厳格な都市封鎖により、本来上海にあった多数の外資系企業の本部や一部のフォーチュン・グローバル500企業のアジア本部がシンガポールに移転し、一部は台湾や日本に移転した」と述べました。
台湾の経済専門家である黄世聡(こう・せそう)氏は、中国の経済問題はその制度にあると述べました。「中国当局は民間企業を抑圧しながら、グローバルのルールと対抗している。そのため、外資系企業が中国当局に対する信頼を失っている。これらの根本的な問題が解決されない限り、外資系企業を説得するだけで、再び大々的に投資してもらうことは難しいだろう」
また、ここ2か月間、中国商務省は多くの外国企業に対して制裁を実施し、アステラス製薬の50代の幹部社員を拘束するなど、こうした行為は、外資系企業が中国に投資することに対する疑念を深めています。
黄世聡氏は、「中国(中国共産党)が米国と対抗しようとしている事実から、ほとんどの外資系企業、特に欧米市場を重視する企業が、中国共産党と距離を置くことを選択している。なぜなら、現在の米国の政治情勢をみると、中国共産党を防備するためなら何でもする可能性があるからだ」と述べました。
(翻訳・藍彧)