中国当局はこのほど、全国の農民に向けて総額100億元(約2000億円)の一時補助金を支給し、穀物の生産に励むよう促しています。
新華社通信17日の報道によると、この補助金は実際に穀物を栽培する人を対象としており、自己所有や契約した土地で穀物を栽培する農民、土地を譲渡して穀物を栽培する大規模な農家、家族農場、農民組合、農業企業などの新しい農業事業体、さらに穀物の栽培・収穫の全工程で社会化サービスを行う個人・組織などが含まれます。
大紀元の調査によると、2021年以降、このような補助金は少なくとも5回支給されています。
中国メディア関係者の黄氏は4月17日、大紀元に対し、公式発表では、この補助金は実際に穀物を栽培する農家に支給されるとなっているが、補助金が対象者の手元に届いたかどうかへの確認について、その間には多くの手続きがあるため、汚職が発生する可能性が高く、いかなる政府部門でも、その資金を横領する可能性があると述べました。
黄氏は、「100億元の資金を各省・市・県、そして村々に配分すると、各階層ごとの役人が配分権を握り、役人次第でコネのある人には配分され、土地を耕作していない人も補助金がもらえることがある。しかし、支給されるべきだが、コネのない人は補助金がもらえない。中国のこのような体制下では、公開・公正を実現することができず、いくら資金を投入しても、役人らの懐に入るだけだ」と述べました。
河北省の農民である王さんは17日、大紀元に対して、「補助金がもらえるのだが、額が少ない。確実に庶民の手元に届く額はほんのわずかなだけだ」と語りました。
中国の穀物輸入増加、その背景にある危機が懸念される
台湾国立政治大学国家発展研究所(大学院)の林義鈞教授兼所長は4月18日、大紀元に対し、中国の「中央1号文書」がここ数年、「農業強国」を強調していると述べました。中国当局が食糧を自分たちの手に握らなければならないとし、大豆やトウモロコシなどの輸入をますます増やしています。
中国の税関総署が4月13日に発表したデータによると、2023年3月には中国が輸入した食糧は1198.9万トン、1月から3月までには3872.7万トンを輸入し、前年同期比4.7%増加しました。
中国国家発展改革委員会の元副主任である杜鷹氏は昨年1月、中国の穀物自給率が2020年には76.8%までに低下し、過去20年間で年平均1ポイント以上低下していると指摘し、日本、韓国、台湾よりも低下速度が高く、2035年までに穀物自給率は65%まで低下すると予測しています。
穀物栽培の収益が低い、中国の農民は農業に消極的
黄氏は、中国当局が穀物価格を独占しているため、市場という環境が存在しなくなっており、本当の市場経済環境下では、粮食生産を奨励する政府補助金はまったく必要ないと述べました。「市場経済では、もし穀物の価格が高ければ、自然に農民たちは穀物を栽培する意欲を持つでしょう。これは非常に単純なことです。市場という環境さえあれば、そんなことに煩わされる必要はまったくないのだ」
黒竜江省統計局は今年4月、公式サイトに発表した報告書によると、近年、農業資材価格、人件費、土地賃貸料などの費用が上昇し、穀物生産コストが増加し続けており、かつて中国の1人当たりの穀物生産量が最も多い県と認定されていた饒河県(じょうがけん)でも、現在、地元の家族が1年間に栽培した穀物の収入は、1人の出稼ぎの収入にも及ばないため、穀物栽培には魅力がなくなっているとのことです。
中国の公式データによると、全国には約5億の農民がいるが、そのうち3億人が都市へ出稼ぎしているといいます。
中国の機関メディア「人民網」は今年2月20日に掲載した記事で、現在の中国の農村では、穀物栽培による収益は依然として低く、土地賃料や労働力の価格が高騰し続けており、また国際的なエネルギーや肥料価格の上昇も影響して、穀物の生産コストが持続的に増加していると認めています。
(翻訳・藍彧)