(イメージ / Pixabay CC0 1.0)

 明王朝に呂清という人がいた。普段はエロ話や婦女を覗くことが趣味で、口と目で淫業を造り、だらしなかった。彼が三十になる時、非常に貧しく、二人の息子も相次いで他界した。

 ある日、呂清は急に斃れ(たおれ)、祖父を見た。祖父は怒りながら彼に言った。「我が家は二代とも徳を積み、善の行いをして来た。お前には巨額な富があったはずだが、美色に執着したせいで、目や口で業を造ってしまい、福禄が全部消えかかっとるじゃないか。もし本当に淫らな悪事を働いたら、呂家の後継はとんてもない始末になってしまう。それを恐れて、わしは閻魔大王にお願いをして、お前を地獄に連れてきたのじゃ。色欲の罰の恐ろしさを見せしめてやるぞ。」呂清はこれを聞いて「不倫をしたら子孫が絶えてしまうと聞いたことがあるから、それを恐れて犯したことはないんだ」と弁解した。

 横にいた冥官は、「子孫が絶えるどころではない。もし女性が自ら誘惑して来て拒まなければそれで済むが、自分から女性を誘惑したり、脅迫したり、再三犯して、ひいては妊娠中絶あるいは相手を殺してしまうようなことをすれば、子孫が絶えるどのろではない。邪婬の罪に対する罰は世間の法律では緩すぎているが、死後の世界では一番厳しいんだ。人がたとえ一念でも邪婬の考えがあったら、罪となるのだ。三尸(さんし)が罪を告発し、城隍神(じょうこうしん)が事実を元に報告し、隠すことや漏れがあれば大きな過ちとなるのだ。よく見とけ」と言った。

 しばらくして、鬼卒らが邪婬の罪を犯した犯人をたくさん連れてきた。すると閻魔大王は「この人を口が聞けない物乞いにする、その人は目の見えない売春婦にする、あの人は十世豚とする」と言って、これらの犯人は鬼卒に転生に連れて去った。

 呂清はそれを目にし、震えが止まらなかった。

 冥官はこう言った。「この人たちよりひどい刑罰もあるぞ、たった一時の満足に人の身を失わせるな。色欲を慎んで遠ざけるべきだ。さらに世にも文書を残し警告するのだ。」そうして、呂清が世間に戻ってから、『遊冥録』を書き残した。そして、極力善い行いをし、四十歳になる時、立て続けに息子を二人預かり、家財も大いに増えた。その後、呂清は南海へ修道に赴き、世俗から離れた。この話は彼の同郷である蔡菁が書き記したものである。

(翻訳・北条)