中国政府は3月5日、人民解放軍の本年度予算が8.1パーセント増加する(昨年比)と公表した。これに対し有識者らは、実際にはより多くの予算が付いた可能性があると指摘する。
公表された資料によると、2018年の中国軍事予算は1.11兆元(約1750億米ドル)であり、世界中に軍事力を展開するアメリカ(7000億米ドル)に次ぐ世界第2位の規模となった。
しかし、海外の専門家たちは中国の公式発表に疑問を呈している。「世界の様々な研究機関が中国の軍事費について推計した結果、毎年2000億ドル以上の軍事費が使われているとの報告がある。それを踏まえれば、中国の公式発表には疑いの余地があると言わざるを得ない」。こう指摘するのは、インドのブルッキングス研究所で研究フェローを務めるデルーバ研究員だ。同研究員はチャイナ・ファイルに以下のような論文も寄稿している。
アジア在住のとある上級外交官は、匿名を条件にロイター通信のインタビューにこう答えている。
「情報開示制度が改善されたため、中国の軍事費はある程度の推測がつくようになった。実際の増加分は少なくとも公表の2倍以上あるに違いない」「また、軍の予算を民間の予算として計上することで見かけの数字を減らすこともできる」。
米国太平洋艦隊の指揮官であるスコット・スウィフト大将はこう述べる。「中国の予算開示制度には不透明な点があり、用途の詳細を正確に追うことはできない」
また中国が予算を公表した2日後、スコット氏は東京でロイター通信に 「中国の軍事的意図ははっきりと理解しがたい」とも語った。
スコット氏だけでなく、日本政府と台湾政府の高官たちも同様の懸念を抱いている。
中国は軍の近代化を進めており、空母やステルス戦闘機の製造に取り組んでいる。さらに中国が自国の領域であると主張する南シナ海の人工島では軍事基地が建設されている最中だ。
オーストラリア大学戦略防衛研究センターのフェローであるサム・ロッヘフェーン氏は、ロイター通信に対し次のように語った。
「中国の軍事拡大は非常に急激だ。これはオーストラリアだけでなく周辺国にも脅威をもたらすだろう」「中国が南シナ海で軍事力を強化する意向を有していることは多くの証拠から読み取れる。今後、南シナ海に人民解放軍が恒久的に駐留するとまでは言わないが、いずれ戦艦や戦闘機を頻繁に見かけることになるのは間違いないだろう」。
一方、米国のアナリストであるジェームス・ホームズ氏は、「中国の発表が本当かどうかは重要な問題ではない」と指摘する。
「中国は海ではなく、陸での戦闘を念頭に置いて準備している。陸での戦闘ならば、米国のように高いコストを支払って戦力を分散させる必要もないからだ。」
「米国の軍人には多額の費用が費やされている。一方、中国の軍人は安く使えるため、見かけの軍事費は小さくなる。数字のトリックに惑わされ危険性を見誤ってはならない」。
(翻訳・今野秀樹)