(EYチャイナのホームページ)

 外資系企業は近年、中国からの撤退が相次ぎ、残った企業も苦境に立たされています。世界4大会計事務所(ビッグ4)の1つであるアーンスト・アンド・ヤング(EY)の中国部門(EYチャイナ)はこのほど、中国共産党員である社員に対し、習近平(シー・ジンピン)氏への政治的忠誠心を示すため、職場で党員バッジを着用するよう求めていることが分かりました。また、北京当局は最近、国有企業に4大会計事務所のサービスを利用することをあきらめるよう求めています。

 アーンスト・アンド・ヤングは世界4大会計事務所の1つです。4大会計事務所とは、世界的に有名なプライスウォーターハウスクーパース(PwC)、アーンスト・アンド・ヤング(EY)、KPMG、デロイトトウシュ トーマツ(DTT)を指し、戦後にビッグ8の会計事務所が複数合併してできたものです。もともとは会計事務所ばかりだったが、業務の拡大に伴い、現在は世界の主要な証券取引所に上場する巨大企業と呼ばれる大規模な企業、または上場していないが取り扱いサービス内容のマーケティングサービスや独自性が高く、比較的規模が大きいといった企業の、ほぼすべてをクライアントとしており、会計・監査・税務・コンサルティングなど、総合的な企業管理サービスを提供しています。

 フィナンシャル・タイムズ紙2月27日の記事によると、通達を受けた関係者2人が明らかにしたところによると、EYチャイナの党委員会が2月23日、社内メールを通じて全党員に共産党バッジをつけるように指示したといいます。

 7人以上かつ50人未満の党員を擁する企業には、党支部委員会設置が義務付けられています。

 EYチャイナは外資系の中で最も早く従業員にバッジ着用を求めた企業の1つです。メールには「バッジは左胸中央に着用し、襟に着けてはならない」「他のバッジも着ける場合は、その上に置く」などと書かれていました。

 EYチャイナで今回の通達を受けたのは北京事務所の従業員に限られたようです。今回の件について、EYチャイナにコメントを求めたが返答はありませんでした。

 しかし、フィナンシャル・タイムズ紙は、EYチャイナは中国国内のパートナーが所有し、EYのグローバルネットワークとは利益を共有していないと強調しました。

 最近では国有企業も党員に対し、バッジを着用して忠誠心を示すよう頻繁に求めるようになっています。これはすべての共産党員の義務であることを強調しています。党の内規では「党員バッジの着用は全共産党員の義務」と定め、「党員の身分を目に見える形で示し、党への義務を全うでき、党員としての自覚を高められる」とその効用をうたっています。

 一方、2月22日付のブルームバーグは、中国当局が欧米の会計士の影響力を抑制するために、国有企業に世界の4大会計事務所のサービスを利用しないよう要請したと報じました。

 関係者の話として、中国財務省などの政府機関が一部の国有企業に対し、プライスウォーターハウスクーパース、アーンスト・アンド・ヤング、KPMG、デロイトトウシュ トーマツとの契約が満了した後、解約するよう促したとのことです。

 ブルームバーグは中国財務省のデータを引用し、4大会計事務所が2021年に中国の全クライアントから合計206億元(約4000億円)の利益を得たと明らかにしました。

 米ボイス・オブ・アメリカ2月25日の評論記事によると、これは米中のデカップリングを示すもう1つの実例だといいます。

 米サウスカロライナ大学エイキン校ビジネススクールの謝田教授は、「中国共産党は知られたくないものがあり、隠蔽する必要があるので、このような行為に繋がっている」と述べました。

(翻訳・藍彧)