米軍戦闘機が2月4日にミサイルを発射し、1週間近く米国上空を漂っていた中国の偵察気球を撃墜しました。これに対し、オーストラリア在住の著名な法学者で政治評論家の袁紅冰教授は、弊社とのインタビューで、中国の偵察気球の内幕を初めて明かしました。

中国の偵察気球とブリンケン氏訪中が衝突

 中国の偵察気球が米国上空に出現した事件は最近、世界各国から注目されています。

 中国共産党内の習近平氏の反対派が習氏に罠をはめようとして、米中対立を意図的に外交レベルまでエスカレートさせ、その結果、ブリンケン米国務長官が予定していた中国訪問を取りやめた可能性が否定できないと、一部のメディアが分析しました。

 袁紅冰氏は、「現在の中国共産党の体制を少しでも分かっている人なら、習氏が中国のあらゆるレベルの高官を綿密に監視するためにハイテクな秘密工作システムを構築していることを考えれば、上述の事態は起こり得ないことはよく分かっているはずだ 」と述べました。

 袁氏は、「習氏が今直面している最も深刻な政治危機は、数千万人の中国共産党幹部の寝そべり、政治への怠慢、投げやりである」と指摘しました。

 習近平氏はもともと、ブリンケン米国務長官の北京訪問を切望していました。習氏の目的は2つあります。1つは、米国の政界で中国に対する宥和の潮流を可能な限り呼び起こし、米国の中国共産党に対する経済戦とハイテク封鎖を弱めることです。もう1つの目的は台湾と関係するもので、米国との関係を緩和することによって、米国が台湾の問題で中国と戦う意志を弱め、中国共産党が台湾を征服するために有利な政治環境を作り出すことです。これが、習氏がブリンケン氏の中国訪問を熱望している理由です。しかし、今回の気球事件が、習氏の入念な計画を破ったのです。

中国共産党は台湾海峡作戦への対処に、第5軍種「成層圏部隊」を密かに結成

 袁紅氷氏は、中国共産党体制内の関係者から得た情報を公開しました。「中国共産党は3年前か4年前に巨大な飛行船部隊を設立した。この部隊は中国共産党軍内で成層圏部隊と名付けられた。成層圏部隊は陸軍、海軍、空軍、ロケット部隊のほかに、第5軍種に属している。この成層圏部隊は軍団レベルで、本部は現在、海南省に置かれている。その作戦活動範囲は2万メートルから4万メートルの地球の成層圏内にある」

 成層圏部隊の作戦の目標想定は主に次のようなものが考えられます。1つ目は、飛行船や長時間滞空する気球を用いて、必要に応じて全世界の陸地や海域に対して全面的な監視を実施することです。2つ目は、重点国、特に潜在的な戦略的脅威を持つ国に対して定期的かつ特別な調査を行うことです。

 この部隊の3つ目の任務は、台湾海峡作戦が始まれば、関連作戦海域の全天候・大規模・死角のない成層圏気球による監視を確保し、中国共産党の中・長距離ミサイルによる正確な攻撃のための情報誘導と位置決め保障を提供することです。

米国上空の偵察気球は成層圏部隊の作戦

 袁氏はさらに次のように語りました。

 「今回のいわゆる偵察気球事件は、実は中国共産党の成層圏部隊が事前に計画していた作戦だ。今回の作戦の目的は、北米、南米、南太平洋を偵察監視することであった。中国軍内の関係者によると、中国共産党は計4つの気球を派遣したという。1つはカナダ経由でアメリカに飛び、1つは南米に向かった。2つはフィリピンとインドネシア上空を通過して、南太平洋に向かった。今回の気球の米国内への侵入事件が発生後、中国軍は南太平洋上にある2つの気球の自爆装置を作動させ、破壊した。

 成層圏は、1万メートル以上から5万メートルの間の大気圏の領域だ。人間はこの空間高度についてほとんど知らない。2万メートル以上の成層圏にある気球や飛行船は、移動速度が非常に遅いため、通常的なレーダーでは検出しにくい。また、通常の戦闘機では2万メートルのような高度に到達することは困難である。そのため、成層圏にある気球を撃墜するには、ハイテクで高射程のミサイルを使う必要がある。気球1つのコストは数十万人民元(数百万円)で済むが、ミサイル1個は100万人民元(約2000万円)になる。このような支出比率は非常に高いのだ」

成層圏部隊は短時間で数百、数千の気球や飛行船を打ち上げられる

 海外メディアの報道によると、米国はすでに中国気球監視計画に関連する中国企業6社をブラックリストに入れたといいます。見かけ上の名称から、これらの事業体はほとんど民間企業です。
これについて、袁紅氷氏は次のように指摘しました。

 「これは中国共産党のいわゆる軍民融合だ。このような気球の製造はハイテクでない。中国軍内の関係者によると、中国軍は今、短時間でこのような気球や飛行船数千を空中に浮かべることができる能力を有している。もし、数千の気球や飛行船がすべて空に打ち上げられた場合、数千発の地対空弾道ミサイルを打ち込んだその後に、中国軍がミサイルが打ってきたらどうするのだろうか。

 この気球自体はそれほどハイテクではなく、成層圏を特殊なエリアとして利用することが最大の利点だ。通常の軍用戦闘機ではそれほどの高さに達することはできないため、戦闘機で撃墜することはできない。対弾道ミサイルや地対空ミサイルで撃墜するとなると、費用が高くて採算が合わない。

 中国の成層圏部隊の3つ目の任務について前述した。それは、台湾海峡で戦争が起きたとき、この成層圏部隊が数百、数千の気球や飛行船を使って、戦闘区域全体の空と海を全天候的に死角のない監視を行うことだ。これにより、中国軍の中・長距離ミサイル打撃の精度を確保する。

 これまで米国はこの部隊の存在すら知らなかったし、軍団レベルの部隊であることも知らなかった。だから私たちはこの成層圏部隊を暴露して、人々の注意を引き起こして、中国共産党のこの新しい戦法を注目させ、注意を払う必要がある。なぜなら、それは一定の脅威があるからだ」

習近平は複雑な国政に対処する能力に欠けている

 袁紅氷氏は、習近平氏の対処能力について、次のように述べています。

 「今回の中国気球が米国領空に侵入し、ブリンケンの訪問と衝突したことは、偶然のように見える。実際、それは習氏の独裁体制の致命的な欠陥であることを明らかにした。つまり、高度な中央集権体制の下で、習氏はさまざまに複雑な国家行動を相互に調整し、協力させる能力に欠けている。

 したがって、習氏の独裁体制下では、乱立する疫病対策や、『迷走する』気球とブリンケン氏の訪中が衝突するなどといった不条理な現象が今後も発生し、常態化することが予想される。

 中国共産党の勢力の世界的な拡大が引き起こす終末的な災難に、我々はいかにして殉じずに済むのか、全国民の反抗とや蜂起を通じて、我々はいかにして中国における自由民主化の新しい章を開くことができるのか、を中国人が考えなければならない重要な問題である」

(文・李静汝/翻訳・藍彧)