古代から中世にかけて、戦場では馬・象・猫・犬・猿・サイなどが兵器として使われていました。しかし「豚」までもが軍事利用されていたことはご存知でしたか?

古代ローマ時代、ローマの軍団(レギオン)はマケドニアの「戦象」部隊に苦戦していました。現代では象は平和的で寛大な動物として知られていますが、古代ローマ人にとって、強力な力と大きな体を持つ象は恐ろしい強敵でした。この恐るべき「戦象」に対し、ローマ人は対抗する手段を発見しました。それはなんと豚を使うことだったのです。彼らは豚を「戦豚」に仕立て上げ、象と戦わせたのです。では小さな豚が巨大な象に勝つことができたのはなぜでしょうか。

歴史学者によると、ローマ軍は豚を戦象の群れの中に放したり、要塞の壁に吊るしたりなどして活用したそうです。豚たちは敵陣を縦横無尽に駆け回まったので、敵を混乱させる効果がありました。また、吊るされた豚が発する悲鳴には象を寄せ付けない効果があったそうです。

紀元前4世紀のディアドコイ戦争の際、メガラ人は生きた豚に火をつけて燃やし、敵の戦象部隊の中に突っ込ませました。戦象は火と豚の叫び声に恐れをなして逃げ出し、動物や兵士を踏みつけたため、敵に大きな損害をもたらしたそうです。

どれだけ訓練を重ねた象も豚の叫び声は苦手で、象は豚に勝つことはできません。そこで象の訓練士たちは、子象を豚と一緒に飼育し、豚に対する恐怖心を克服させるなどの対策をとりました。

戦豚の時代にも終わりがやってきます。豚に火をつけるとすぐに焼けてしまうため、遠距離攻撃には弱いことがわかったのです。そのうえ、火のついた豚は制御が利かなくなり、味方の軍にも向かってくるため、自陣営が燃えてしまうこともあったとか。

(翻訳・今野秀樹)