商湯(パブリック・ドメイン)
商湯(しょうとう)
商湯の王朝が始まって間もなく深刻な干害が起こりました。数年間続いた干害により水源は枯渇し、草木は枯れ、農作物を収穫できず、多くの人が餓死しました。商湯は干害をどうにかしたいと思い、町はずれに祭壇を設置し、毎日のように祭礼を執り行わせて神様に向かって干害を免じてくれるようにと雨乞いしました。
干害から七年経ちましたがやはり一滴の雨も降らず、人々は苦しみに耐えられなくなっていました。商湯は城外の桑林という名の山で、自ら大臣を引き連れて雨乞いの祭祀を行いました。ところが、祭祀を行った後も雨が降る気配は一向になく、商湯は仕官に命じて占いをさせたところ、占いの結果は「祭祀の時、牛や羊だけでなく、さらに人間を神様に献上しなければならない」というものでした。商湯は民衆を献上することなく、人々のために自らを神様に献上することを決めました。
商湯は髪と爪を切り、斎戒沐浴をして身を清めた後、両脇を支えてもらい、神様に向かって懺悔しました。罪は自分一人にあると認め、民衆にもう罰を与えないように天の鬼神に向かってお願いし、すべての罪は自分が償うと誓いました。
神への祈りを終えると、商湯はすぐに薪(たきぎ)を積んだてっぺんに登りました。薪に火を点けようとした正にその瞬間、突然一陣の激しい風が吹き付け、天空はたちまち黒雲で真っ暗になり、土砂降りの雨が大地を覆うように降り注いだのです。それによって長年にわたる干ばつが解消したのでした。
人々は商湯こそ神の使者であり、人々を救う王であると思いました。人々のために自ら犠牲になろうとする信念が神の心を動かし、恵の雨を降らせたのでした。
商湯が人民のために身を捧げる物語は、歴史上有名な「湯の桑林での祈り」の由来です。
(つづく)
(文・天煕/翻訳・夜香木)