(イメージ / pixabay CC0 1.0)

 アメリカ・メキシコ州で行われたオークションで、廃坑から発掘された一本のジーンズパンツが87,400ドル(約1,280万円)で落札されました。

 このジーンズは1880年代に製造されたリーバイス(Levi’s)ジーンズで、二世紀にわたって142年の歴史を持つものの、驚くほど状態がよく、着用も可能という極めて希少なものです。

 メディアによると、このジーンズは、アメリカ西部にある廃坑で、5年がかりで探索して見つけられたそうです。100年以上前のものであるにもかかわらず、数か所に穴があるだけで、非常に良い状態です。これまで発見されたジーンズの中で最も価値のある一着です。

 サンディエゴでヴィンテージショップを経営するカイル・ハウトナー(Kyle Hautner)氏と、ロサンゼルスでヴィンテージデニムショップを経営するジップ・スティーブンソン(Zip Stevenson)氏が76,000ドルという高い価格で、このジーンズを共同で落札しました。15%バイヤーズプレミアム(註)を加えて、このジーンズの最終価格は87,000ドルとなり、ヴィンテージジーンズの史上最高値を更新しました。

 このジーンズのユニークなところは、百年以上の歴史価値だけでなく、長い年月を耐えたにも関わらず状態が非常によいということ、です。スティーブンソン氏によると、過去に同年代のものも発見されましたが、ほとんどが博物館に保管せざるを得ないほど劣化した状態でした。しかし、この142年前のジーンズは、ちょっとした補修をすれば着用できるような状態です。これはこのジーンズが特別に高価な要因の一つです。

ジーンズの誕生

 19世紀、アメリカ各地で「ゴールドラッシュ」が勃発し、一攫千金を狙う採掘者が殺到しました。1848年1月24日、カリフォルニア(当時はまだ州になっていない)のサッターズミル(製材所)で黄金が発見されました。このニュースが広まると、アメリカ各地や海外からおよそ30万人が貧困脱出の追い風に乗るために、カリフォルニアに集まってきました。

 1850年代後半、アメリカの有名な商人、リーバイ・ストラウス(Levi Strauss)氏は、布の商売をするためにカリフォルニア中部沿岸のサンフランシスコにやってきました。テントを作るための丈夫な綿帆布(はんぷ)も持ち運んできました。

 ストラウス氏は、金鉱で働く人たちが履いている綿布のズボンが仕事で破れやすいことに気づきました。そこで、彼は厚手のテント用の帆布でズボンを作ることにしました。これはジーンズパンツの最初の雛形でした。この新しい生地で作られたズボンは黄金の採掘者にだけでなく、カウボーイにも好まれ、次第に幅広い人気になりました。その後、ストラウス氏はこの生地をインディゴデニム地に改良しました。

 1871年に、ストラウス氏はジーンズの特許を出願し、世界で有名なリーバイス社を設立しました。その後、製品の改良を重ね、ジーンズは一般大衆の間にも普及し、今日どこでも目にすることができるカジュアルな服飾となりました。

 ジーンズは耐久性に優れるので、長年履き続けることができる特徴があります。しかし、いくらジーンズが丈夫だとはいえ、百年以上の出土品になるとは、誰も思っていなかったでしょう。

 註:「バイヤーズ・プレミアム(Buyer’s Premium)」とは、買い手が払う落札価格に対する手数料。

(翻訳・心静)