台湾のYouTubeチャンネル「政経最前線」8月24日の放送では、米国在住の中国政治経済専門家の程暁農(ていしょうのん)博士は、中国共産党が台湾を侵攻するための一つの手段として、サイバー攻撃や海底光ケーブル破壊によって、台湾と外部とのつながりを断ち切る可能性について語った。
程博士は番組の中で、2015年末に中国共産党が創設した新たな兵科「戦略支援部隊」について詳しく解説した。同戦略支援部隊の軍人の多くは、中国サイバー軍(電子戦部隊)に所属している。外界が中国サイバー軍を知ったのは2013年だ。当時、上海浦東新区にある中国サイバー軍の一部である61398部隊が、米国に対して大規模なサイバー攻撃を行ったことから、たちまち世界各国の注目を集めることになった。米国のサイバーセキュリティ社がかつて、同部隊に関するセキュリティレポートを発表したことがあり、複数のメディアも同部隊を大きく取り上げていた。それ以来、外界は中国サイバー軍を初めて垣間見ることになった。
中国サイバー軍はなぜ上海に設置されたのか?程氏によると、上海はアジア太平洋地域での国際通信の重要な通信中継センターであり、中国インターネットの主要な国際的出口でもある。中国には現在7つの大型国際海底光ケーブルシステムがあり、そのうち3つは上海近くの崇明島(すうめいとう)に陸揚げ局が設置されている。61398部隊の駐屯地は崇明島に近い高橋町にあり、そこは、ちょうど陸揚げ局と中国電信の浦東通信ハブとの間に位置している。このようにして、光ケーブルの陸上部分は同部隊の駐屯地の下を通過している。そのため、同部隊はネット侵入を行なうのに非常に便利で、上海市のネットワークシステムを経由せずに、米国政府部門や企業のウェブサイトに直接ハッキングすることができる。
同部隊は、電力会社、水道会社、天然ガスパイプライン会社など、米国社会に重大な影響を与える複数の民間企業のデータベースへのハッキングを繰り返した。明らかに、これらの侵入は技術を盗むためではなく、将来のある時期に破壊行為を行なうためである。
2013年1月、台湾の馬英九政権(当時)と中国共産党政権は共同で、福建省福州市長楽区江田鎮と台湾新北市淡水区を結ぶ海底光ケーブルを建設した。程氏によると、福州市にある中国戦略支援部隊311基地は、61398部隊の戦術を用い、このケーブルを通じて台湾のネットワークシステムに侵入し、大規模な損害を与えることができるため、現在この光ケーブルは台湾の防衛上の弱点になっているという。
現在、台湾には4つの国際海底光ケーブル陸揚げ局(台湾島の北端と南端に2つずつ)があり、台湾通信の95%以上がこの4つの光ケーブル陸揚げ局に依存している。海底光ケーブルが中国共産党のダイバーや潜水艦に損傷されたり、この4つの陸揚げ局が破壊されたりすると、台湾と外部とのネットワークは断ち切られることになる。
程氏はまた、日本にも同じようなセキュリティリスクがあることに言及した。日本の海底光ケーブルの大部分は2つの陸揚げ局を通しており、そのうちの1つは東京の近くにある。2014年から2019年にまで、内閣官房副長官補兼国家安全保障局次長を務めた兼原信克氏は、かつてウォール・ストリート・ジャーナルの記者に対し、日本の海底光ケーブル局では、すべての光ケーブルが2メートル×2メートルの空間に集中しており、そこが爆破されれば、想像にたえない結果になると語った。
そのため、程氏は、台湾と日本に対し、民間でのサイバーセキュリティの保護を強化するだけでなく、海底光ケーブルの保護と代替通信システムの準備も強化するよう念を押した。
(翻訳・藍彧)