米国の最も重要な国立研究所で勤めた少なくとも154人の中国系の科学者が、過去20年間に中国共産党(以下、中共)政権によって中国に呼び戻されていた。彼らは米国の国家安全保障を脅かす最先端の軍事技術を始めとする科学研究に従事していたことが、情報セキュリティ企業の最新の報告書で明らかになった。
米情報セキュリティ企業「ストライダー・テクノロジーズ(Strider Technologies)」は、22日にセキュリティレポートを発表した。中共が米国のロスアラモス国立研究所から中国系の科学者を引き抜いた経緯が記載されている。
ロスアラモス研究所は、米国で初めて核兵器が開発された場所であり、米国の国家安全保障に関わる軍事研究と一般の理学・工学研究、安全保障等の社会科学研究全般を行っている。日本のライトノベル『緋弾のアリア』では、人工生命の製造拠点として描かれている。
同報告書によると、多くの科学者が中国に呼び戻され、地中貫通型核兵器、極超音速ミサイル、潜水艦の水中騒音低減技術、無人航空機などの先端技術の研究に取り組んだとされている。
例えば、ロスアラモス研究所に18年間勤務し、総額約2000万ドルの研究資金を得た爆弾専門家の趙予生氏は、最高機密へのアクセス権を持つQレベルの許可を持ち、地下を深く貫通する爆弾の開発という国防プロジェクトを主導していた。2016年、趙氏は中共の人材プログラムに参加し、その後、米国を離れ中国の研究センターに入った。現在、国防研究を行う中国南方科技大学の副学長を務めている。
趙氏の他、ロスアラモス研究所で活躍していた科学者15人が現在、南方科技大学で働いており、その中には陳十一前学長も含まれているという。2015年から2020年まで学長を務めた陳氏は、中国の極超音速ミサイルの研究に大きな役割を果たした。
科学者の名前や研究内容など、このような脅威をこれほど詳細に記述した非機密報告書を読んだのは初めてだと、米政府関係者が述べた。
また、中共政権が米国の国家安全保障に重大な脅威を与える軍隊を構築するために、人材招致プログラムを利用して米国の技術を獲得したことも報告書に記されている。レポートの主執筆者であるグレッグ・レヴェスク氏は、中共政府のこの人材招致モデルについて「米国の国家安全保障に直接的な脅威を与えており、すぐに行動を開始する必要がある」と語った。
一方、米国に移住した中国系科学者の大多数は米国に残り、その多くは米国の国防技術に多大な貢献をしたと、米政府関係者と専門家が指摘した。
(翻訳・徳永木里子)