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 国と家を合わせて国家という。家はつまり家庭であり、国を構成する最小の機能単位である。国は家庭によって構成された一つの団体である。その関係は細胞と臓器の間の関係とも言える。家庭が健全であれば、国も強固になる。一方、家庭を構成する重要な要素は夫婦である。つまり、夫婦の関係が健全化すれば、家庭も平和になり、国も安泰になる。故に古代文化においては、夫婦関係に厳しい要求があったのだ。

「和」を大切に

 和やかな夫婦関係は家庭にとって最も重要である。これに関して、中国の初めての詩集『詩経』の中には「妻子好合、如鼓瑟琴」という名句があり、つまり夫婦関係は瑟琴(しゃきん、弦楽器)を弾くことと同じで、調和して初めて美しい音色が発せられる。また、明代の児童教育書『幼学瓊林』の中に「夫婦和而後家道成」という言葉があり、つまり「夫婦が和やかな関係を保つことができて初めて健全な家庭を築くことができる」ということだ。和やかな夫婦関係を保つために互いに信頼し、互いに尊敬し合うことは重要であり、故に夫婦は常に「相敬如賓」(互いにお客さんに接するように尊敬し合う)のように要求される。

夫は外、妻は内

 陰陽の理論から言えば、男性は陽に属し、陽は剛の特性があって外を主り、女性は陰に属し、陰は柔の特性があって内を主る。これによって、家庭の仕事の分担が決められる。つまり、夫は生活資源の獲得や社会との付き合いなどの外のことを分担し、妻は衣食の用意、家庭内の整理整頓、子育てなどの内のことを分担する。『礼記』には「男不言内、女不言外」の言い方があり、つまり「男は家の中のことを指図せず、女は家の外でのことに出しゃばらず。」である。伝統文化では「相夫教子」(夫を支えて子供を教育する)は女性の美徳とされてきた。

夫婦の主従

 安定な夫婦関係を維持するために、明確な主従関係が必要である。伝統文化の中では、夫は主とし、妻は夫に従うという夫婦関係を定めている。『大戴礼記・本命』に「在家従父、適人従夫,夫死従子」という記載があり、つまり「結婚する前に家父に従い、結婚した後に夫に従い、夫が亡くなれば息子に従う」と要求されている。このような関係は現代人の価値観から「男尊女卑」と批判されがちであるが、別の角度から見れば、主になる人は決定権があるとともに、家庭を守る責任を背負わなければならず、家庭を守るために犠牲も辞さない立場に置かれており、逆に女性は常に保護される立場に置かれている。男は決して有利な立場とは言えない。

離婚の条件

 伝統文化の中で、離婚は非常に不名誉なことであり、よほどの事情がない限り、離婚は許されない。これは女性に対して特に厳しいものである。故に女性は苦しい婚姻生活を終わらせるために、離婚ではなく、死を選ぶ場合もある。一方、男性の場合、妻に特別な事情があれば、離婚が許される。その条件としては、『大戴礼記』の中に「七去」として纏められている。つまり、「子供を産めない、淫乱があり、舅と姑に孝行しない、嫉妬心が強い、家庭関係を離間する小言が多い、盗む行為があり、聴覚障害や視覚障害および肢体の運動障害などの疾患がある」場合は、夫は妻と離婚できるというものである。これらの事は、いずれも家庭の存続に危険をもたらすことだからだ。

 一方、離婚を許されない場合もある。それはいわゆる「三不去」である。つまり、「妻を受け入れる実家がもう存在しない、妻は舅あるいは姑が死後3年以上服喪したことがある、結婚前に貧しかった夫が結婚後金持ちになった」などの場合、夫が妻と離婚することは許されない。

 以上の事を見ると、伝統的な婚姻観念では、家庭の安定や家族の平和を重視し、道徳を大切にしていることが分かる。それによって、家族は繁栄し、国家の繁栄に繋がると考えられていた。

(文・東方)