安倍元首相の銃撃事件に対し、世界各国の首脳が安倍元首相を悼むツイート、コメントを発信し、哀悼の意を表明した。その一方、この悲しい出来事は、多くの中国の過激的な小粉紅(注)や極端な民族主義者を興奮させた。しかし、これらの小粉紅はすべての中国人を代表するものではなく、ネット暴力で受ける危険や書き込みが削除されるリスクを冒しても、正直で善良な声を出すことを選ぶ人もたくさんいる。
安倍元首相の銃撃事件は発生後、瞬く間に中国のウェイボー(微博)の検索ランキングに登場し、わずか数分で数万件の「いいね」を獲得した。ウェイボーのコメント欄で、嘲笑や拍手などの内容が殺到した。また安倍氏の銃撃を祝う横断幕を掲げ、販売促進(販促活動)を行なう中国企業も少なくなかった。
中国の小粉紅のこのような過激な行動は、すぐに各国メディアの注目を集めた。8日の中国外交部の定例記者会見で、外国人記者が趙立堅報道官にこの問題を提起したが、「ノーコメント」と返答された。
中国小粉紅らのこのような過激な行動や態度は、実は中国共産党による一貫した洗脳や扇動の結果であるという時事評論家もいる。中国共産党支配下の中国では、天災や人災が絶えず、政治の腐敗や闇があり、中国共産党は政権維持のために、国民を圧制している。このような状況下では、民衆には不満のはけ口が必要で、歴史上に中国と衝突があった日本は、真っ先にその憎しみの対象となっている。中国共産党は、中国人の日本への憎しみを許容し、意図的に誘導している。
中国共産党の政権創立以来、日本からの巨額の経済・科学技術援助について、当局は意図的に隠し、ほぼ報道して来なかったため、多くの中国人は、日本政府が長年にわたって表明してきた善意を知らないままになっている。それどころか、毎年多くの「日本抗戦」映画やドラマを放送し、抗戦中に中国人が受けた抑圧を繰り返し誇張し、中国国民の日本への憎悪感情を深めている。実は、中国共産党に騙され、洗脳されたこれらの小粉紅も被害者である。
中国の大々的な洗脳プロパガンダの下でも、中日関係を客観的・理性的に見ることができ、安倍元首相に哀悼の意を表す中国人がたくさんいる。
澎湃新聞の日本駐在の曽穎記者は、安倍元首相の政治的功績を伝える生中継で、何度も声を詰まらせた。その後、彼女は多くの小粉紅からネット上で攻撃されたが、「この世の生身の人間として、いかなるテロ行為も狂喜されるべきではない。私は永遠に自分の価値観を堅持し、善良で正直な人でありたいと思う」と述べた。
また、2016年に安倍元首相がG20に出席した際、ホテルの清掃スタッフに残した感謝状を投稿するネットユーザもいた。多くの中国ネットユーザーが安倍元首相の思いやりや優しさに感心するコメントを残した。
さらに、中国国内のネットユーザーは、日本に住む中国人に、安倍元首相が銃撃された現場に行き、花やメモを捧げて哀悼の意を表するよう頼む声も多く出ている。
安倍氏の逝去に喜んでいる中国の小粉紅や極端な民族主義者に対し、唐山師範学院の石文瑛教授は自身のウェイボーアカウントで、「モラルに堕落した人間の唯一の喜びは、他人が不運に遭ったことだけだ。一部の人は、自分が劣っているとき、他人の不幸を見て楽しむこと以上の喜びはない」と公然に批判した。
自分の国や民族、文化を愛するのはもちろん間違っていないとコメントするインフルエンサーもいる。「私は中国人だが、足元の土地や周りの同胞への愛情がいっぱいだが、自分の国、自分の民族、自分の文化への愛は、必ずしも他の国、他の民族、他の文化への憎むことを基礎とする必要はない。『憎しみ』の基礎に築かれた『愛』は非常に恐ろしいものであることは歴史が証明している」
TIME 最新号の表紙と安倍元首相の感謝状:
TIME新封面。及安倍晋三手迹:2016年,安倍晋三出席G20峰会入住杭州西溪喜来登酒店,离店时给清洁工留下便条写“感谢”。 pic.twitter.com/9JKW3ElxFF
— འོད་ཟེར།唯色Woeser😷💙💛 (@degewa) July 9, 2022
注:小粉紅(しょうふんこう)とは、1990年代以降に生まれた若い世代の民族主義者のこと。この語は「ピンクちゃん」に等しく、「未熟な共産主義者」であり「完全に赤く染まっていない」という意味で中国語で小粉紅とよばれる。
(翻訳・藍彧)