習近平氏と彭麗媛氏は6月30日午後香港を訪問した。(YouTube動画のスクリーンショット)

 習近平氏と彭麗媛氏は、6月30日午後、香港に隣接の中国広東省深セン市から高速鉄道で香港を訪問した。7月1日午前、英国から中国への香港返還25年周年の記念式典で演説し、香港情勢の「安定」を誇示する見通しだ。

 香港警察に近い関係者によると、習氏は香港には泊まらず、30日は香港政府高官や各界関係者らと面会した後、深センに戻って宿泊した。1日朝に再度香港入りし、記念式典に出席する。 

 香港の「星島日報」は、習近平氏が30日夜に予定されていた香港政府による歓迎夕食会も、新型コロナ対策を理由に取りやめになったという。

 今回初めて、約900日間国門を出ていない習近平が、本土を離れる。香港政府は厳戒態勢を敷いており、安全保障上の理由からメディアに初めて記者の変更を求めたほか、香港全域をドローンの飛行禁止区域に指定する規制を初めて発動した。西九龍駅周辺の街区には10メートルから20メートルおきに歩哨が設置されており、一部の街区では高台に警察官が配置されている。

 時事評論家の桑普氏はラジオ・フリー・アジアに対し、習近平氏は、一方ではコロナ感染を恐れ、他方ではクーデターや暗殺の危険もあるという大きなリスクを負っていたが、それでも、第20回党大会を前に、権力を握っており、疑惑やリスクを恐れないことを示すために、妻とともに堂々と香港に出かけたと語った。

 台湾大学の明居正名誉教授の分析によると、鄧小平氏は当時、一国二制度に同意せざるを得なかったが、共産主義が本当に優れているならば、なぜ二制度が必要なのだろうか? 中国共産党はこのことを心底よく分かっており、それゆえ一国二制度は恥ずべきことだと考えてきた。国家安全維持法の導入と香港での警察支配の実施は、一国二制度の完全な否定に相当する。習氏はこれが中国共産党への大きな手柄であると考え、今回はそれをアピールしようとしているのだ。

 中国共産党はこれまで、常に欠けているものを誇示してきた。習氏の意図的な権力誇示は、かえって第20回党大会前の党内部の不安定さを示しているのだ、との見方がある。

(翻訳・藍彧)