カメラのレンズは戦車の前に立ちはだかる男性を捉えた（イメージ：YouTube Screenshot）

　中国で1989年に起こった学生たちが民主化を求める天安門事件において、米写真家、チャーリー・コール氏（64）が「戦車男」と呼ばれた男性の決定的瞬間を撮影した。一人の男性が人民解放軍の戦車の前に立ちはだかる姿は世界中を驚かせた。コール氏はこの写真により、1990年の「世界報道写真コンテスト」で大賞を受賞した。9月5日、同氏がインドネシアのバリ島で亡くなったことが分かった。

　コール氏は1955年に米国のテキサス州で生まれた。かつて米「ニューズウィーク」のカメラマンとして、多くの有名な画面を捉え、中でも「戦車男」の写真が話題を呼んだ。同氏は生前、「戦車男」を撮った直後の危機一髪な過程を振り返った。
「当時、私は北京ホテルのベランダで、白いワイシャツを着た男が戦車の前に立っていた画面を捉えた。そして、すぐにこの貴重な瞬間が記録されたフィルムは北京当局に撤収されかねないと気づき、フィルムをホテルのトイレの水槽に隠した」

　コール氏の予想は的中、まもなく当局は室内に立ち入り、捜査を徹した。彼が撮ったデモ者が写っているフィルムや未使用のフィルムまで処分された。さらにコール氏に反省文を求めた。当局が立ち去った後、コール氏は隠したフィルムを「ニューズウィーク」で発表し、1990年の「世界報道写真コンテスト」で大賞を受賞した。

　ある重大な交通事故のあと、コール氏は報道撮影をやめ、商業撮影にシフトチェーンジした。晩年はインドネシア人の妻とバリ島に移住し、15年以上をそこで過ごした。彼は「ニューヨークタイムズ」に対し、「たった一人のカメラマンとして、歴史的な瞬間に居合わせて光栄に思う、『戦車男』がこの世を驚かせた行動を取ったからだ」と述べた。

「戦車男」が2秒間映し出されたライカの広告ビデオ：

（翻訳編集・北条）