収容施設の内部写真(xinjiangpolicefiles.orgより)

 中国新疆ウイグル自治区の警察官の機密データベースが謎のハッカーによって突破され、数万件の重要なファイルや公式の極秘文書が取得された。24日、複数の海外メディアの報道で分かった。

 仏紙「ル・モンド」の報道によると、これらの資料は米非営利団体「共産主義犠牲者記念財団」(VOC)のアドリアン・ゼンツ上級研究員が入手したものだという。同自治区カシュガル内の公安ネットワークから第三者がハッキングしたもので、複数のメディアの検証を経て、VOCなどが24日に調査結果を公開した。

 中国新疆ウイグル自治区で少数民族のウイグル族らが強制収容されている問題で、2万人分以上の収容者リストや収容施設の内部写真など、2017から18年頃の中国当局の内部資料数万件が流出した。「逃げる者は射殺せよ」と命じた中国共産党幹部の発言記録など、関連の内部資料としては過去最大規模の流出とみられる。

 党幹部の発言記録によると、自治区トップの陳全国・党委員会書記(当時)は2017年5月の演説で「海外からの帰国者は片っ端から捕らえろ」「拘束者が数歩でも逃げれば射殺せよ」と指示。習近平総書記ら党中央の関与を示す公安トップの発言もある。

 機密文書の中には、中共公安部長の趙克志氏が2018年に行った内部演説に関する内容もあった。趙氏は演説の中で、新疆南部だけで200万人以上が「過激派宗教思想の浸透に深刻な影響を受けた」と警告した。また、中共中央の指導者が新疆ウイグル自治区の拘留所の収容能力を増強するよう直接命じたことに言及した。

 収容者リストには、カシュガル地区コナシェヘル県のウイグル族ら2万人以上の身分証番号や収容理由が記されている。ゼンツ氏は同県で2018年頃、成人全体の12.1%以上が収容されていたと推計した。10から70代までの収容者2800人超の顔写真のほか、当局者が収容者に手錠や覆面をつけて尋問したり、制圧訓練を行ったりする施設内部の写真も流出。VOCは「罪なきウイグル人らが犯罪者のように扱われていることを証明するものだ」としている。

 これまでにBBCやル・モンドなど複数の海外報道機関が、これらの漏洩した文書の内容の一部を検証したという。

(翻訳・徳永木里子)