中国人の身長について歴史上において様々な憶測があります。 古代の人は栄養が不足しているため、身長が低かったのではないかということが一般的な認識ですが、近年、古代中国人は現代人より総じて背が高いと言う見方も浮上しています。
その証拠の例の1つとして、始皇帝陵の兵馬俑が挙げられます。
始皇帝陵の等身大の兵馬俑
1974年に中国西安の郊外の畑で井戸を掘っていた農民が偶然兵馬俑を見つけました。地下に2000年もの間眠っていた兵馬俑の出土は、世界中を驚愕させました。始皇帝陵兵馬俑坑では、今日までに約8000体の俑が確認されており、それらは指揮官、兵士、騎兵からなる大軍団であり、敵国がある東に向き、整然と隊列を組んで並んでいます。
・身長180cmの兵士俑
兵馬俑坑はその発掘順序により、1号坑、2号坑、3号坑等と名づけられています。1号坑には兵士と馬の6,000体以上の陶製の像があると考えられており、現在では約1,600体が発見されています。
兵士俑の平均身長は180cmを超え、彼らの顔の表情はそれぞれ異なり、鎧も身分によりまちまちで、いずれも手に武器を握っており、威勢を放っています。そしてその馬の高さは1.5mとなっています。
・身長190cmの将軍
3号坑は司令部となっており、わずか68体の陶俑しかなく、指揮官の将軍だと考えられています。将軍らの身長はいずれも190cm以上もあり、兵士よりも身長が高いことが分かります。
・身長2.5mの「秦の巨人」の出土
2012年6月12日に、秦始皇帝陵の陪葬坑の一つである百戯俑坑から「秦の巨人」が出土しました。
この巨人俑は頭部が紛失されていますが、頭部がない状態で2.2mの高さがあり、頭部を含めると2.5mはあるだろうと専門家が見解を示しています。
兵馬俑の身長が高い理由は2つあると考えられ、1つ目は、彼らは始皇帝の直属の兵士であるため、体格のよい兵士の中から選ばれた可能性が高いこと。2つ目は、実際の人間より少し大きく造ったのではないかという推測です。いずれにせよ、兵馬俑を近くで見た人は、誰でも現代人よりも背が高い兵馬俑の威風堂々たる姿に圧倒され、感心させられることでしょう。
孔子も項羽も190cm位の高身長
孔子(紀元前551または552−紀元前479年)もまた高身長として有名です。中国の歴史家・司馬遷の『史記』によると、孔子の身長は9尺6寸で、「長人」と呼ばれていました。これを現代の単位に換算すると2mを超える長身になります。現代人の身長から考えても、信じ難いことです。
西楚の霸王、項羽(紀元前232−紀元前202年)も当時の大男とされ、『漢書』においてはその身長は8尺2寸と記録されています。秦の時代の1尺は現在の約23cm程度であるため、項羽の身長は190cmぐらいという計算になります。
その一方で、中国政府が発表した「中国人口の栄養と慢性疾患の状況(2020)」によると、中国の成人の平均身長は伸び続けており、現在、18~44歳の中国人男性の平均身長は169.7cm、中国人女性の平均身長は158.0cmとなっています。
「現代人は身長が高い」という説は果たして本当なのでしょうか?
(文・一心)