ロシア連邦保安局(Stas Lobov, CC BY-SA 3.0 , via Wikimedia Commons)

 ロシア西部のある女性教師はこのほど、授業中にロシア・ウクライナ戦争に反対する発言をしたため、生徒に密かに録音・告発され、刑事捜査に直面している。ロシアのウクライナ侵入が続く中、このような密告事件もロシアで繰り広げられている。

 米CNNによると、イリーナ・ジェンさん(45)は、ロシアの若いアスリートのためのエリート校で英語教師をしており、生徒の多くが海外の主要大会への選手権を持っているという。

 3月31日にソーシャルメディアTelegramに投稿された録音ファイルによると、ある生徒がジェンさんに「なぜロシアは今度のマルチスポーツの欧州選手権に参加することを禁止されたのか」と尋ねると、ジェンさんは「ロシアが文明的な振る舞いをしない限り、禁止は続くだろう」と答えたという。

 ジェーンさんはまた、「彼ら(ロシア)はウクライナ西部への爆撃を開始した。キエフに侵攻し、ゼレンスキー政府を転覆させることを望んでいるのだ。しかし、それは主権国家であり、独立した政府を持つ国である」と述べた。この時、ある生徒は「私たちは詳しいことを知らない」と言った。ジェーンさんは、「その通り!あなたたちは何も知らない。全く何も分かっていないのだ。ここでは中央集権的な統制を実行している。いかなる反対意見も思想犯とみなされ、15年間の刑罰になる」と続いて述べた。

 ロシア連邦保安局のある役人は学校に来て、ジェーンさんに対して、ロシア軍がウクライナ南東部の港町マリウポルへの爆撃など、ウクライナの民間施設を攻撃したことを授業で生徒に話したことは、「重大な過ち」を犯したと告げたという。

 4月1日に教職を辞したジェンさんは、ロシア軍の信用を損なうとされる「虚偽の情報」を流したとして、言論検閲に関する新法に違反した疑いで刑事捜査を受けている。有罪判決が下されれば、最高10年の懲役と最大500万ルーブル(約730万円)の罰金に直面する。

 ジェンさんの体験は、明らかに孤立したケースではない。ロシア南部の都市アストラカンの数学教師、イェレナ・バイベコワさん(女性)も1日、授業中に「政治的議論」をしたため、生徒に告発され、学校に解雇された。

 東シベリアの町ネリュングリでは、元警察官で歴史教師のアンドレイ・シェスタコフさん(男性)が、ソーシャルメディア上でウクライナ戦争に関するいわゆる「虚偽ニュース」を流したとして、3月末に辞職に追い込まれ、3万5000ルーブル(約5万円)の罰金を科せられた。授業でウクライナの民主的な選挙や平和的な政権の引継ぎについて議論し、保護者に密告された。

 ロシア・サハリン州のコルサコフで働く英語教師マリナ・ドゥブロヴァさんは3月下旬、生徒と戦争について話し合ったことを理由に解雇された。生徒が授業中の様子を録音していたことで、保護者から学校にクレームが入った。ドゥブロヴァさんはいわゆる「虚偽の情報」を流したとして、3万ルーブル(約4万円)の罰金を科せられた。

(翻訳・藍彧)