長生き人(ネットより)

 清王朝期の勧善書『德育古鑑』には、倹約と贅沢、そして寿命の関係を生々しく説明した物語が記載されています。

 昔、生年月日が全く同じで、生まれた時間すら同じ二人の太学生①がいました。親友である二人は同じ年に郷試に合格し、同じ日に官職に任じられました。一人は鄂州の教授②として派遣され、もう一人は黄州の教授として派遣されました。鄂州と黄州はさほど遠くないので、二人はよく連絡を取り、互いの近況を知らせるようにしていました。

 しばらくして、黄州教授が亡くなりました。鄂州教授は親友の死後の後始末のために黄州に行きました。生年月日が同じなら、運命も同じであるべきだと思い、鄂州教授は黄州教授の霊前で泣きながら「私たちは同じ日にこの世に生まれ、同じように官職に就いていますが、あなたが私より先に亡くなりました。たとえ私は今死んだとしても、もう七日間も遅れています。なぜなのでしょうか?私の声が聞こえていたら、夢の中に現れて、その理由を教えてください」と言いました。

 その夜、鄂州教授が眠っていると夢に黄州教授が現れました。「私はお金持ちの家に生まれて、栄華と富貴を全部使い果たしたので、死んでしまったのです。ところが、あなたは貧乏な家に生まれて、贅沢を享受したことがないため、生き続けているのです」と黄州教授が言いました。

 鄂州教授はこの夢をみて、贅沢をせずに、倹約することの大切さを更にわかるようになりました。その後も、倹約を続けた鄂州教授は昇進し続け、典郡③にまで就きました。これは、黄州教授の話を聞き、身を修めて気を付け、自分に与えられた福禄を大切にしようと努力した結果なのではないでしょうか。

 人の福禄には定数があり、常に自分のために余地を残さなければなりません。多くの人は、巨大な富を手に入れながら、百歳まで生きるという夢を見ていますが、寿命と福禄は密接に関連しています。過度な贅沢は、福禄を尽くしてしまい、悪運が訪れ、早逝すらしてしまうのです。倹約の大切さを知ることこそ、悪運を避け、絶えず福禄を迎えることができるのです。

中国語原文:

 昔太學生二人,同年月日時生,又同年發解。過省,二人約相近差遣,庶彼此得知禍福。故一人授鄂州教授,一人授黃州教授。未幾,授黃州者死。鄂州為治其後事,祝柩前曰:「我與公年月日時同,出處又同。公先我去;使我今即死,又後七日矣!若有靈,宜夢以告。」其夜果夢告云:「我生於富貴,享用過了,故死。公生寒微,未曾享用,故生。」以此知人之享用,須留有餘。後鄂州教授歷官至典郡。豈非聞此儆悟修省而然耶?(『德育古鑒』より)

 註:
 ①「太学」とは、官吏養成のための最高学府。
 ②「教授」とは、教育を専門的に担当する官職。
 ③「典郡」とは、郡の文書を取り仕切る官職。

(翻訳・金水静)