前米国国務次官シャノン(左)、前国防副長官シャナハン(中)、前エネルギー長官ブルーレット(右)は、2018年2月2日に国防総省で行われた記者会見で「核態勢の見直し」を発表しました。( U.S. Navy, Public domain, via Wikimedia Commons)

 バイデン政権は28日、米国の核政策や戦略を定める報告書「核態勢の見直し(NPR)」を公表し、極端な状況下での核兵器を率先して使用する権利を保留するという。

 デイリー・メール26日の報道によると、バイデン政権は28日に「核態勢の見直し」を議会議員に発表した。その後、欧州訪問中のバイデン米大統領は31日にベルギー・ブリュッセルでG7首脳会合、および4月1日に北大西洋条約機構(NATO)同盟国に発表する予定であるという。

 オバマ政権とトランプ政権では「極端な状況下では核兵器を率先して使用する」政策を保留すると同報告書に書かれている。つまり、米国(または同盟国)が通常部隊による侵入や生物・化学兵器の攻撃を受けた場合、率先して核兵器を使用する権利を保留するとしている。また、核抑止力が核兵器の「基本的な役割」であり、「単一の目的」ではないと明らかにした。これは、米政府が第二次世界大戦以来ずっと維持してきた核政策である。バイデン氏は選挙に出馬する際に、政府が核を保留する「唯一の」目的は核攻撃を受けた後、核を使用することだと約束したが、当初の公約を覆した。

 バイデン氏が選挙当時に公約したことは、フランスや日本を含む米国の同盟国の間で懸念されていたという。その公約は、米国の「核の傘」の影響力を弱める上、ロシアや中国共産党が憚らずに化学兵器や生物兵器を使用したり、戦争を引き起こしたりすることになるのではないかと懸念していた。

 その後、バイデン氏はロシアと中国共産党の核兵器庫拡大の脅威を考慮し、米国が核兵器の脅威にさらされた時だけ核兵器を使用するという約束を撤回することにした。

 米政府の情報筋によると、バイデン氏はロシアがウクライナに侵攻した後、同公約を放棄したという。「大統領がこの問題を考えている時に、ロシアはウクライナに侵攻した。自分が弱腰だと思われたくなかったのだろう」と述べた。

(翻訳・徳永木里子)