ロシアは現在、ウクライナで予想外の激しい抵抗に遭っているが、不利な戦況、特に欧米からの前例のない制裁に直面しても、プーチン氏のキエフ奪取への決意を阻むことはないようだ。プーチン氏がウクライナに侵攻する決意を固めた理由について、当社はカナダ在住の中国系弁護士、頼建平氏にインタビューした。
頼氏によれば、ロシアによる侵略戦争は、世界征服というプーチン個人の野望によるものだという。プーチン氏は大統領として、ロシアの最高権力者であり、戦争の決定権も持っている。つまり、同氏の個人的な意志によってウクライナに侵攻したのだ。同氏は国内では何の制約も受けておらず、戦争をするコストは非常に低い。このことに気づいた欧米諸国は突然、ウクライナを全面的に支援する姿勢に転じた。
戦争が起こって以来、ロシアでは反戦感情が高まり、兵士の戦意さえも低い。しかし、プーチン氏は世論によって決断を揺るがされなかった。強い反対があることを十分承知の上で、なぜプーチン氏が戦争を始めたのか、その疑問を解明する必要がある。
プーチン氏が戦争を起こした言い訳は、ウクライナの北大西洋条約機構(NATO)加盟への恐れ、いわゆるNATO脅威論で、同氏はNATOの東方拡大がロシアの存続を脅かすと考えている。この脅威を戦争を起こす理由として提示することで、同氏は何らかの形で世論に彼自身の個人的な意志を押し付け、人々を戦争支持へと扇動しているのである。
ロシアとヨーロッパの対立は本質的な価値観の問題であり、この違いから生じる脅威論は、実は誤った懸念、ひいては存在しない脅威であることと、頼氏は指摘した。欧米諸国は民主主義国家であり、特定の個人や集団の気まぐれではなく、外国に対して侵略戦争をすることはまずないため、ロシアにとって軍事的な脅威とはならない。
プーチン氏は、ロシアがかつての栄光を取り戻すためなら何でもできると考えており、帝国という夢を使って歴史に名を残すという個人的な目標を達成しようとしているのだ。現在のロシアの政治体制は、同氏が強硬な手段を駆使できる政治舞台を持つための条件を整えている。また、ロシアの宣伝機関の浸透を通じて、同氏はロシア人の国民感情をあおってきた。これらの要因が相まって、同氏は大きなリスクを負って戦うことになった。
しかし、1つの問題は明らかだ。2月4日に北京で開催された冬季五輪の開会式に出席し、習近平氏と会談して数千億ドルの受注を決めた後、プーチン氏は国賓晩餐会にさえ出席せずに急いで帰国した。このような異常な行動を見ると、プーチン氏は渡航が確かに北京五輪のためだけではなく、中国共産党(以下、中共)に政治的・経済的な支援を求め、実状を説明したのだろうと思われた。そのため、今回のウクライナへの侵略戦争では、ロシアが戦争をし、中共がその代償を払うことになる可能性がある。
この推測はすでに確認されたものだ。複数メディアの3日の報道によると、米当局者は、中共当局が北京五輪終了後にウクライナへの侵攻を開始するようロシアに要請したことを明かした。ロシア軍がウクライナに侵攻したのは、北京五輪が終了した直後だった。
現在、戦争が予断を許さない状況になり、欧米でロシアとプーチン氏自身に対する制裁は始まり、中共にはもはや表立ってロシアを支援する度胸はない。世界各国が最大限に結束して、ロシアの侵略を徹底的に止めることができれば、中共政権にとって大きな打撃となる。
(翻訳・徳永木里子)