中国の史書の記載によると、三皇五帝(さんこうごてい)の時代、中国の大地は仙人たちの足跡で覆われています。仙人たちの出現には、様々な神獣や神鳥、そして吉祥なる雲・祥雲も登場します。このような記載は、夏商周時代から現代まで伝えられている文様の一部と一致しています。中には、雲紋、夔紋、鳳凰紋、蔓草紋、饕餮紋、連珠紋などの文様は、各王朝期の青銅器、陶器、玉器、建築用彫刻、さらには服飾の刺繍などの工芸品で多数発見され、数千年にわたる華夏民族の独特な文様系統を構築しています。
神韻芸術団の舞台背景幕、衣装およびグッズで、多くの文様の創作インスピレーションはこれらの伝統文様です。伝統文様もまた、中国の数千年の歴史を物語っているようです。今回は、そんな天界からの中国の伝統文様を4つご紹介します。
一、雲紋
雲紋または祥雲紋は、よく使われる中国の伝統文様です。中には、勾雲紋、朵雲紋、雲頭紋、流雲紋などの種類があります。「祥雲」とは、もともと七色の彩雲のことを指します。その出現は、常に仙人の出現と伴います。古代の帝王たちも常に祥雲で身を守られていると言われています。なぜなら、徳の高い人は天界の守護を賜ることができると、古代中国人はそう信じていました。後世に伝わっていく中、祥雲は次第に吉祥のイメージとなり、詩歌や文学の中でしばしば言及されるようになりました。
古代中国人は、雲の上に天界があり、天界には東皇太一様と美しい仙女たちが住んでいると信じていました。雲紋への格別な愛好は、古代中国人の天界への憧れの表れではないでしょうか。
二、鳳紋
鳳凰とは、天界からの神鳥です。太平の世にたまにしか姿を現さない鳳凰は、梧桐にしか棲まず、醴泉の水しか飲まず、気高く美しい神鳥だと伝わってきました。『山海経』『淮南子』『庄子』で、鳳凰は文章で記述されています。
商王朝期以降の様々な文物には、鳳凰の姿がはっきりと記録されています。中国最古の鳳凰をかたどった玉器は、殷王武丁の妻・婦好(ふこう)の副葬品です。それ以降の各王朝期の工芸品で、鳳凰の姿は益々精巧で華やかで、様々な形を現します。多くあるのは飛鳳、立鳳、団鳳、鸞鳳(らんぽう)などです。
三、雲雷紋
雲雷紋は連続する幾何学模様です。その中の四角い回紋は雷の象徴で、丸い回紋は雲の象徴です。四角と円の交差は、天空にある雲と雷を象徴します。
『易経』では、「雲雷は、屯なり。君子もって経綸す(註)」との記載があります。その意味とは、雷が鳴り始めると、始まりの時を意味する芽生えであり、君子は国家経綸(けいりん)の大志をおこすものだということです。殷周王朝期の青銅器には、荘重で優雅な雲雷紋が多く刻まれています。以降、雲雷紋を基に、色々な回紋が派生されました。永遠と続いていく回紋は、「尽きない富」をも表してしていると言われています。
四、龍紋
中国の正史古伝にも野史古伝にも、地方の歳時記などにも、龍が地上に現れたという記述が繰り返し出てきます。文物、絵画、彫刻作品では、龍の描き方は若干異なりますが、概ね一貫しています。つまり、鹿のような角、鯉のような鱗、鷹のような爪、蛇のような体を持ちます。龍は、雲霧を乗り風雨を呼ぶ神獣だと、古代中国人は信じてきました。佛教文化では、龍は天界を生きる命で、八部衆の中の一つであり、仏法を守護する護法善神だと伝えられています。古代中国では、至高の龍は男気と帝王の象徴とされていましたので、文様でもよく見かけます。
「龍生九子(りゅうせいきゅうし)」と言われるように、龍紋も多くの種類があります。「蟠螭(ばんち)紋」も「夔龍(きりゅう)紋」も異なる種類の龍を描いています。龍の姿も多種多様です。例えば、清王朝の皇帝たちが愛好する五爪坐龍紋、立龍紋や、民間人が愛好する三爪団龍紋、四爪団龍紋、そして九龍柱によくある昇龍紋などがあります。そのほか、龍紋は鳳紋、雲紋、水紋、宝珠などと合わせ、吉祥文様として人気が高いのです。
神伝文化である中国伝統文化の一部として、多彩多様な伝統文様も「天人合一」の理念を内包しています。天界からの文様はほかにも多々あります。例えば、仏様の慈悲と高徳を象徴する卍字紋、吉祥と善徳を伝える神獣を代表する麒麟紋、そして西王母様の頭上に輝く髪飾りを象徴する方勝紋。挙げればきりがありません。
神韻芸術団の衣装、ステージセットおよびバックスクリーンでは、凝ったデザインの美しい文様は数え切れないほどあります。その多くは、天界からの吉祥の意味を持つ伝統文様からインスピレーションを得ています。神韻のフォトブックには、神韻の舞台で上演される素晴らしい瞬間だけではなく、華やかな色彩と見事な中国の伝統文様も記録されております。次の舞台を鑑賞する際にも、歴年の神韻フォトブックや神韻グッズのデザインにも、これらの精緻な伝統文様には要注目です。
註:中国語原文:雲,雷,屯;君子以經綸。(『易経』より)
(翻訳編集・常夏)