棚氷とは、陸上の氷河または氷床が海に押し出され、陸上から連結して洋上にある氷を指し、多くの場合、上面は平坦な形状になっています。
南極には約160万平方キロメートルもの巨大な面積の棚氷がありま
海外メディアの報道によると、この発表は2021年12月20日刊行の学術誌『カレントバイオロジー(Current Biology)』に掲載されました。これまでの研究記録によると、南極の棚氷の下で生息できる生物種は少なく、そのほとんどは魚やミミズ、クラゲ、オキアミなど自律的に移動する生物です。しかし今回、研究者たちは、海面からわずか数キロメートル離れた棚氷の下に、合計77種の生物を発見しました。
ドイツのアルフレッド・ウェゲナー極地海洋研究所(AWI)の研究チームは2018年、ウェッデル海南東部・エクストロム棚氷に深さ約200メートルの穴を2つ開け、そこの海底生物を採取して標本を作りました。
その結果、太陽光が降り注ぎ、餌が豊富な海域よりも、多様性に富んだ生物が生息していることがわかりました。ナイフ状のコケムシ、ミミズなど、全部で77種発見されました。
この報告書の主執筆者であるデイビット・バーンズ(David Barnes)博士はプレスリリースで、「このような極限状態でこんなに多くの生物が生息していたことは大変驚くことであり、海洋生物がとてもユニークで特別な物なのかわかりました」と述べています。
研究者たちが驚いたことは、これらの生物種のほとんどが、微細藻類を餌とする濾過摂食(註)を行っていることがわかりました。しかし、ここの海底では植物や藻類は生存できないので、海流によって棚氷の下に運ばれた藻類を餌にしていると考えられています。
また、この環境下で4種が「開放水域に生息する同種の生物と同等の年間成長率」ということも判明しました。
特に注目する点は、放射性炭素年代測定法により測定すると、これらの生物が少なくとも6,000年近く前からその環境に生息していたことを突き止めたことです。共同研究者であるゲルハルト・クーン(Gerhard Kuhn)博士は、「最も近い海面から3〜9キロメートル離れているにもかかわらず、この棚氷の下の盛んな生物圏が6000年近くも持続していることは不思議だ」と述べました。
また、気候変動の影響で棚氷の融解が進む中、南極の棚氷の下に生息する生物の保護と研究が急務であることを言及しました。
註:濾過摂食(ろかせっしょく)とは、動物の餌の取り方の類型の一つで、触手や鰓などを用いて漉し取る(濾過する)ように餌をとるやり方を指す。
(翻訳・玉竹)