中共海軍最大級の揚陸艦である075型強襲揚陸艦(星海军事, CC BY 4.0, via Wikimedia Commons)

 中国の秦剛駐米大使は1月27日、米公共ラジオ(NPR)とのインタビューで、台湾をめぐって米国と中国が衝突する可能性があると発言しました。インタビューの中で、米中関係は中国共産党にとって最も重要な外交関係であることを認めつつ、台湾を「火薬庫」と表現しました

 その後、中国人民大学国際関係学院副院長の金燦栄教授が、習近平は2027年までに台湾を武力統一すると発言したと、1月30日付の日本経済新聞で報じられました。金燦栄教授は習近平の外交のブレーントラストの一人と言われており、彼の発言は習近平の本音をある程度反映しています。

 習近平は両岸の統一が中国共産党の目標であると繰り返し述べていますが、明確なタイムテーブルを提示したことはありません。金燦栄は今回、「22年秋の共産党大会が終われば、武力統一のシナリオが現実味を増す。解放軍の建軍から100年となる27年までに武力統一に動く可能性は非常に高い」と述べました。

 また、金氏は独占インタビューで、中国共産党の軍隊はすでに1週間以内に台湾を統一する能力があり、海岸から1000海里以内にいる米軍を打ち負かすことができると明かしました。同時に、日本に対して「台湾有事に干渉してはならない」、さもなければ中国は「日本をも倒すしかない」と脅しました。

 中国共産党政権の外交官やブレインの公式声明が、米国と日本政府にそれぞれ台湾問題に介入しないように警告していることは明らかです。では、今回の一連の行動は、中国共産党による日米に対する単なる試しなのでしょうか、それとも、正式な軍事作戦を起こす直前に、日米による台湾への軍事支援を抑止するための脅しなのでしょうか。

台湾の戦略的位置づけ

 トランプ元米大統領の国家安全保障顧問として勤めていたロバート・オブライエン氏は1月21日、FOXニュースとのオンラインインタビューで、習近平はウクライナ情勢を注視し、北京での冬季五輪後に台湾侵攻を決断するかどうかを検討していると述べました。

 台湾は「太平洋の栓」であり、もし台湾が陥落すれば、中国共産党の海軍は太平洋に無制限にアクセスできるようになり、米国のハワイ、カリフォルニア、アラスカなどを脅かすことになると強調しました。また、中国による台湾占領は、米国とアジアの同盟国である日本、オーストラリア、フィリピンとのつながりも断ち切ることになると指摘しました。

 日本にとっては、台湾が中国に占領されれば、当然、日本の沖縄も中国共産党の支配下に入ることになり、中国共産党がこれを足がかりに日本への侵攻を開始する可能性はかなり高いです。中国共産党が日本を侵略しなくても、台湾の海域を封鎖するだけで日本の生命線を完全に断つことができます。

中国共産党の台湾侵攻の真の目的

 中国共産党は常に、台湾は中国の一部であり、台湾を統一すると主張してきました。しかし、台湾は中華民国の領土でありながら、一度も中国共産党政権の統治下に置かれたことがないのに、なぜ中国共産党が統一を口にできるのでしょうか。もし中華民国(台湾)政府が中国統一のために中国大陸を攻撃しようとするならば、それは合理的なことです。 しかし、中国共産党が台湾を攻撃するのは合理的ではありません。

 中国共産党は共産主義を信奉しており、共産主義の最終目標は世界を支配することです。そこで毛沢東の時代、中国共産党は「全人類の解放」を提唱しました。今、習近平政権は「人類運命共同体」の構築を提案していますが、これは実は同じことで、どちらも中国共産党が全世界を支配する意図を表しています

 現在、世界で最も強い国はアメリカであり、アメリカを倒してこそ、中国共産党は世界征服という最終目標を達成することができます。中国の経済力が徐々に強くなるとともに、中国共産党の世界支配の野望も徐々に露わになってきました。2020年以降、米中は本格的な政治・外交・諜報・軍事対決の局面に入っています。米国在住の国際政治経済学者である程暁農博士は、これを「新米中冷戦」と呼んでいます

 2021年2月の新唐人テレビのインタビューで、程暁農博士は、中国共産党は中国と米国の間に広大な太平洋があるため、陸軍で米国を脅かすことができず、米国を脅かせるのは海軍だけであると述べました。中国共産党は当初、空母10隻の建造を計画していたが、技術力不足のため、2020年からは密かに空母艦隊を主体とする海軍戦略から原子力潜水艦艦隊を主体とする海軍戦略に転換してきました。さらに重要なことは、中国共産党は同時に核戦争戦略も密かに変更し、米ソ冷戦時代の反応的な核反撃のようなものを、積極的な核攻撃に変えてしまいました。すなわち、中国共産党の原子力潜水艦が米国西海岸に近い太平洋の深海に入り、米国に対する能動的で準備万端の核攻撃を形成しています。そのためには、中国共産党の原子力潜水艦が第一列島線を突破しなければなりません。

大陸間弾道ミサイルを発射する潜水艦(パブリック・ドメイン)

 いわゆる第一列島線は、日本本土から沖縄を経て、台湾、フィリピン、マレーシア、インドネシアに至る狭い地域です。米軍は、中国共産党に対処する最良の戦略は、米軍の防衛戦線を第一列島線に押し上げることだと考えています。そして、今中国共産党がやろうとしていることは、何としても第一列島線を突破することです。そうしてはじめて、中国共産党の原子力潜水艦は太平洋の深海に入り、アメリカを脅かすことができるからです。

左が第一列島線(パブリック・ドメイン)

 したがって、程暁農博士は、中国共産党の軍事攻撃の主な標的は米国であり、いわゆる中国統一のための台湾攻撃は口実に過ぎず、米国こそが中国共産党の真の敵対国であると考えています。

中国共産党の台湾侵攻の準備

 2021年2月、海外在住の元中国共産党海軍司令部中佐の姚誠氏は、新唐人テレビのインタビューで、中国共産党海軍は台湾攻撃に十分な備えをしていると発言しました。姚誠は、台湾に対して効果的な上陸作戦を行うには、中国共産党海軍は少なくとも70隻の大型揚陸艦が必要であり、2020年末の時点で、中国共産党海軍はすでに74隻の大型揚陸艦を持っており、揚陸艦の数は十分であると述べています。

 また、姚誠氏は、台湾への上陸作戦には最低10万人の兵力が必要だと考えています。 現在、中国共産党海兵隊は8つの旅団で総勢4万人、それに海兵隊に完全転換した中国共産党軍の第72軍と第73軍を加えると、すでに10万人を超えています。 さらに、中国共産党軍の第71軍と第74軍も台湾を攻撃するための軍隊に含まれています。したがって、台湾侵攻に必要な兵力が十分あります。

中国共産党の海兵隊(パブリック・ドメイン)

 姚誠氏は、中国共産党が2018年に新設した海上警察艦隊は、正規の海軍部隊の要領で完全に編成されており、軍艦の総数は約100隻で、中国共産党海軍の艦隊の規模に匹敵するものだとつけ加えました。つまり、中国共産党の台湾侵略のための軍事的準備は基本的に完了しており、いつでも軍事攻撃を開始できる状態にあるということです。

 複数のメディアの報道によると、中国共産党は2020年以降、各国から大量の食料を購入しているとのことです。 2021年12月22日の日本経済新聞(中国版)の報道によると、中国の穀物備蓄量は2021年上半期に世界の備蓄量の半分以上に達したという。

 中国共産党の穀物大量購入の理由について、各国のメディアでは様々な憶測が飛び交っているが、中国国内の軍事サイト「西陸網」の2021年5月12日の評論記事では、中国共産党が2021年前半にコストに関係なく穀物を大量購入したのは、これからの戦争に備えるためであると明言されています。

 中国には「軍隊が動く前に、まず食物が動く」という古いことわざがあります。 中国共産党は、ひとたび戦争が始まれば、他国から食糧を購入できなくなることを知っていたので、あらかじめ食糧を備蓄しておかなければなりません。

中国共産党の台湾侵攻の時期について

 中国共産党は台湾を侵略する準備ができているので、いつ戦争を仕掛けるのでしょうか?

 もし、中国共産党が遠い未来に戦争を始めるとしたら、すでに造られた軍艦やその他の兵器は老朽化してしまい、それまでに米国とその同盟国は戦争の準備を万全にしているはずです。 したがって、中国共産党は近い将来、戦争を計画しているに違いありません。

 2021年3月に行われた上院軍事委員会の公聴会で、元米国インド太平洋軍司令官のフィル・デビッドソン提督が、台湾の安全保障について「今後10年間、実際には6年間は脅威が続くと思う」と語りました。

 日本の軍事研究家・元陸上自衛官で、国家生存戦略研究会の矢野義昭会長は2021年7月21日、日本イノベーションクラブで中共は2027年までに尖閣諸島と台湾を併呑することを目標としている可能性が高いと述べています。

 2021年10月、オーストラリアに滞在する法学者である袁紅氷(えんこうひょう)氏は「中国の情報筋によると、習氏は第20回党大会の後、つまりジョー・バイデン米大統領の最後の任期でもある2023年から2024年の間に、台湾海峡の戦争を発動する時間帯が予定されている」と述べました。

 トランプ政権初期に国家安全保障問題担当大統領補佐官を務めたハーバート・レイモンド・マクマスター将軍は2021年3月2日米上院軍事委員会で開催された公聴会で、習近平氏は中国を統一しようとしているが、台湾を攻撃するにはタイミングがあると考えており、2022年北京オリンピック後の時期に、中国共産党が台湾を攻撃する可能性があり、台湾にとって最も危険な時期であると述べています。

ハーバート・レイモンド・マクマスター将軍(US Army, Public domain, via Wikimedia Commons)

結論

 秦剛大使と金燦栄教授の発言は、彼らの個人的見解であるはずがなく、中国共産党政権が台湾問題における日米政府の姿勢を探り出すことであり、すでに戦争の準備が完了したうえでの開戦前の威嚇行為であると言えるでしょう。

(看中国記者・黎宜明/翻訳・北条)