北京大学の社会学元教授鄭也夫氏(鄭也夫氏のウェイボーより)

 中国北京大学の社会学元教授鄭也夫氏(71)は21日、武力による台湾統一に反対する声明を公表した。台湾への軍事的威嚇は必ずや憎しみを増やし、平和的な統一を遠ざけ、米国を巻き込んだ核保有国同士の戦争さえ招きかねないと警告した。

 近年、台湾海峡の緊張情勢が急激にエスカレートしており、今秋の第20回全国代表大会の頃には北京が台湾を武力で侵すのではないかという声も絶えずメディアで聞かれ、国際的な懸念が高まっている。

 その中で、かつて2019年に中国共産党に「歴史から去れ」と呼びかけた記事をSNSに掲載したことで注目を集めた鄭也夫氏は22日、武力統一と武力威嚇に反対するという2つの立場を簡潔に表した論文を発表した。

 鄭氏は次のように書いた。「武力統一に反対する、一介(取るに足らないもの)の書生がこのような態度を表明するのに意義があるのか?ある!第1には、重大な事柄は積極的に発言し、万が一の事態を救っておかないと、後で後悔することになるからだ。第2には、私は国民の一員であり、私は孤独ではない。私の反対は、人民を代表すると主張している武統派を打ち砕くことができる。第3には、言論統制のため、公共のプラットフォームで武力統一に反対する言論はほとんど消滅されており、このような情勢の下で戦争反対を訴える声は非常に貴重だ。戦争を始める際の第一の防御線は、反戦世論である。声を出さないことは棄権であり、皆が声を出さないことは武力統一を集団で黙認することである。無神経なことはしたくないので、このような告白をさせていただいた」

 鄭氏は続いて、武力による威嚇に反対する理由を明らかにした。「中国の政策決定層は最近、平和的統一が最も望ましくて第一選択であることを改めて表明した。武力的威嚇は憎しみを強め、平和的統一のわずかな希望を失わせるに違いない。擁護派は、威嚇は台湾の独立を抑制するためのものだと言うだろう。抑制されているのは、名目上の台湾の独立にすぎず、70年以上も事実上の台湾の独立には何らかの影響も及ぼさない。45年にわたる名実ともに整った独立は、東西ドイツの再統一を阻むことはなかった。ドイツ人に比べて、私たちは統一のために威嚇し、威嚇のために敵になり、茶番もいいところだ」

 また、武力による威嚇の大きなマイナスは戦争を誘発することである。人類の歴史上、多くの戦争が、征服と実利のためではなく、メンツのためであった。威嚇がエスカレートすると、中国、台湾、米国はいずれも譲歩の余地がない。70年以上にわたって、核の恐怖が核保有大国間の直接戦争を抑制してきた。一方、仮に核保有国が戦争に突入した場合、核武装を阻止できる勢力はほとんどないだろう。したがって、台湾に対する武力的な威嚇を放棄することが急務である。

 鄭也夫氏は元北京大学教授として、中国共産党の政治体制や中国の社会現象に対する批判的な評論でよく知られている。彼は2019年に「政改が困難な原因(政改難産之因)」と題する長文の論文を発表し、中国共産党は歴史の舞台から去るべきと発言し、当時は波紋を呼んだ。

 鄭氏は民間で高い人気を持っており、接した人たちから高い評価を得ていた。 科学研究の腐敗に反対し、国費で行われるプロジェクトには決して申請しなかった。北京大学の公式サイトの彼に関する紹介「受賞と栄誉」の最後に、「公的な賞には一切応募せず、拒否する」と書かれている。

(翻訳・藍彧)