あの有名な南宋王朝の岳飛将軍(1103年―1142年)については、誰もが彼の冤罪を忘れないでしょう。しかし、岳飛が避けられない運命に直面する前に、その悲劇的な最期を予言した禅師がいたそうです。
南宋王朝の紹興時代、岳飛が軍隊を率いて外敵の金に抵抗し、連続勝利を収めました。しかしその時、高宗皇帝は奸臣・秦檜の讒言(ざんげん)に耳を傾け、岳飛に首都臨安への帰還を命じる12の命を次々と下しました。敵を倒すことに専念していた岳飛は気が進まなかったのですが、皇帝の命令に逆らうことができないため、臨安に戻るしかありませんでした。
臨安へ向かう途中、岳飛は鎮江を通過した時、船から出て、鎮江にある金山寺に行って、住職の道悦(とうえつ)禅師を訪ねて、夢の解釈を求めました。
岳飛は「昨夜、二匹の犬が抱き合って話している夢を見ました。この夢が何を意味するのでしょうか」と道悦に語りました。
これを聞いた道悦は驚きました。二匹の犬(「犭」と「犬」)が言葉を発している。「犭」と「犬」の間に「言」を入れれば、漢字の「獄」ではありませんか!
宿命神通を持つ道悦禅師は悟りの高僧です。彼は岳飛が災難からそう遠くないことを分かっていますが、岳飛に臨安に戻るなと説得するほか成す術はありませんでした。しかし、岳飛は皇帝の命令に逆らうわけにはいかないと、道悦の警告を聞き入れなかったのでした。道悦は仕方がなく、忠告の詩を書いて岳飛に贈りました。
「風波亭の下で大波が転がっています。船に乗っている時は、舵から目を離さないでください。周りの人々からの悪意で、その大波に押し込まれないように気を付けてください①」
別れ際に道悦はさらに、岳飛に次の偈を提示しました。
「足りない師走に、泣く空に気を付けよ。奉の下に二つの点が、人を毒害するから②」
岳飛はそれが何を意味するか分からないまま、臨安に戻りました。
1141年の旧暦12月は29日しかない「小の月」となり、これは偈の中の「足りない師走」に対応します。その日の夜に、突然雨が降りました。これは偈の中の「泣き空」が語ってくれています。「奉の下に二つの点」は漢字の「秦」、つまり秦檜のことを指します。「人を毒害する」と文字で表しています。
臨安に戻った直後、岳飛は投獄され、「莫須有(あったかもしれない)」の罪名で、風波亭の下で秦檜の手によって処刑されました。
中国語原文:
①「風波亭下浪滔滔、千萬留心把舵牢。謹防同舟人意歹、將身推翻在波濤。」
②「歲底不足,謹防天哭。奉下兩點,將人害毒。」
(翻訳・宴楽)