中国当局は、北京五輪でデジタル人民元の使用を推進し、ビザ(VISA)に挑戦している。また、中国中央銀行は、国際的なクロスボーダー(国際間取引)決済のためにデジタル人民元を推進し続けており、その金融拡大に対する懸念が高まっている。
北京五輪でのデジタル人民元がビザに挑戦
北京五輪に参加する選手やスタッフに対して、通常のビザロゴ入りクレジットカードに加え、人民元のデジタルウォレットの利用が推奨されている。クレジットカードの国際決済の手数料とは対照的に、デジタル人民元は追加手数料が発生しないため、世界的な決済大手であるビザに課題を突きつけている。
ウォールストリートジャーナル(WSJ)が情報筋の話を引用し、4日の開会式で北京国家体育場(鳥巣)のデジタル人民元決済の総額が、ビザを上回ったと報じた。
北京五輪の選手村にいる選手やスタッフは、通常の銀行カードに似たデジタル人民元ウォレットをもらえ、外貨を補充できる。また、スマートフォンでデジタル人民元アプリをダウンロードし、残高を保存することもできる。選手村の商店、銀行、郵便局、美容院などでも利用できる。
北京市地方金融監督局が10日に発表したデータによると、デジタル人民元の実施は40万以上の北京五輪に関する場所を対象としており、取引額は96億元(約1750億円)に上ったという。
デジタル人民元の国際化への道のり
中国当局が資本の自由な流れを制限しているため、中央銀行が為替に介入し、それまで人民元の国際化は信用と流動性に欠けていた。今、デジタル人民元は、国際化に向けて同じような障害に直面している。
ボイス・オブ・アメリカ(VOA)16日の報道によると、大西洋評議会(アトランティック・カウンシル)の上級研究員である洪川(Hung Tran)氏が、「中国が資本勘定を完全に自由化し、金融市場をさらに発展させない限り、その(デジタル人民元の)存在自体が、より多くの国が人民元を使用しない決定的な要因にはならない。」と述べた。
米シンクタンク、ケイトー研究所のノアバート・ミシェル(Norbert Michel)主任は、ドルは米国の政治的・経済的な立場に基づいており、デジタル人民元の導入によって変わることはないと主張した。「特に、多くの国際取引がすでに電子化されている現在、通貨の形態そのものは問題ではない。他国の通貨が米国の力を弱めることができるのは、他の通貨がドルそのものよりも価値があると認識される場合だけ」
日銀の黒田東彦総裁は、日本は欧米と協力し、中央銀行デジタル通貨(CBDC)の世界標準を策定する必要があると述べた。デジタル人民元を利用して世界金融に進出しようとしている中国当局にとっては、抑止力として機能する可能性があるという。
(翻訳・徳永木里子)