南宋・趙伯驌「風檐展巻」( パブリック・ドメイン)
宋王朝時代以前、「扇面絵」とはすべてうちわに描いたものを指し、宋王朝の扇面絵もほとんどうちわの形をしていました。例えば、 宋の徽宗の「琵琶山鳥図」、梁楷(りょうかい)の「秋柳双鴉図」、夏珪(かけい)の「松渓泛月図」、林椿の「梅竹寒禽図」、馬和之(ばかし)の「月色秋声図」 、李嵩(リーソング)の 「夜月看潮図」、張茂の「双鴛鴦図」などです。この頃より扇面絵は宮廷から民間へ徐々に広がり、その題材も花、鳥、風景、人物などをカバーしていました。
扇子の枠は比較的小さく、描き方も非常に繊細です。このような扇面絵は中国でスケッチ画の先駆けとなりました。例えば、趙伯驌は「風簷展巻」で学者役人の優雅でのんびりとしたライフスタイルを描写していて、お茶を給仕する少年も一緒に描いています。また、その絵には清の高宗「乾隆」の提言も書かれています。
「うちわ」は西漢王朝から宋王朝時代の1000年以上の間、多くの人達に使用されていました。宋王朝以降も又、「折りたたみ式扇子」と同じくらい人気になり、妃嬪、宮仕えの女性、文化人達に深く愛されました。うちわは一般的に扇部の「地紙」と「骨」、「柄」、「房飾り」の4つの部分で構成されています。房飾りは装飾で、扇部の地紙と骨、そして柄は必要な部品です。地紙にシルク織りが使われている「うちわ」があり、それは白いシルクと、金(銀)のシルクと、色シルクと3種類に分類することができ、「紈扇」(ワンサン)または「齊紈扇」(チーワンサン)と呼ばれています。骨や柄の素材も色々で、非常に特殊な物では、骨、玉、象牙など、一般的な物では竹や木が使われています。骨と柄に使用される材料は通常同じで、骨が竹製なら、柄も竹製です。また骨に漆が塗られている場合は、柄にも塗られています。彫漆されたうちわはさらに繊細で貴重で「堆漆(ついしつ)」や「剔紅(てっこう)」に区別されました。
(つづく)
(文・紫翎/翻訳・藍彧)