中国の経済学者である任澤平氏が10日、「奨励出産」に関する1万字の記事を発表し、ウェイボー(微博、Weibo)のトップランキングに上った。任氏は、高齢化と少子化の問題を解決するために、「少子化対策奨励基金」を公式に設立し、中央銀行が毎年2兆元(約36兆円)を増刷し、10年後に5千万人の子供を産むよう社会に奨励することを呼びかけた。同話題は、多くの議論を呼んだ。
「2兆元を印刷して子供を産ませ」
中国のスーヂョウ・セキュリティーズ(東呉証券股分有限公司)のチーフエコノミストである任澤平氏は10日、『少子化の解決策は見つかった、中国出生報告』と題する記事を発表した。少子化の主因は、子供を産み育てる費用が高すぎることと住宅価格が高すぎることであり、それぞれ41.5%と27.2%を占めているという調査データを引用した。そのため、子供を産み育てるコストを下げることは、少子化から脱却する主な方法である。出産奨励基金の設立は、短期的には成長の安定と内需拡大、長期的には供給側の改善や人口構造の最適化、民族復興の一助となり得るものである。
しかし、これはウェイボーのトップランキングに上った原因ではない。同記事は、少子高齢化問題を解決するために、中央銀行が2兆元を増刷し、10年かけて5000万人以上の子供を産むよう社会に働きかけることを提言するとともに、一刻も早く少子化奨励基金を正式に発足させることを求めた。
11日午前3時20分まで、7,822人が参加したアンケートの結果を、任氏はウェイボーで発表した。「出産奨励基金に賛成」が4,903人、「反対」が2,919人である。「子どもを産みたくない理由」について答えた13,000人のうち、「子育て費用が高い」が5,618人、「住宅価格が高い」が3,505人、「次世代はもうニラ(注)にしたくない」が2,120人であった。
任氏の最新の反応、ネットで話題になった
また10日、「紙幣を印刷して子供を産む」というホットな話題に対して、任氏が応えた。
今後10年間で5,000万人の出産増ということは、つまり年間500万人の出生数が増えることである。2021年の総合出生率は1.1であり、新生児は約1000万人である。しかし、世代間の人口のバランスを確保するために、年間1500万人が必要がある。つまり500万人の出産増が必要となると、任氏が述べた。
中央銀行が2兆元を印刷する理由について、経済協力開発機構(OECD)諸国は出産奨励に関連する家族の社会福祉にGDPの2〜3%を費やしており、中国のGDPは110兆元なので、出産奨励の基金は2兆元になるはずだと、任氏が指摘した。「ここで注意したいのは、出産を促すために、毎年2兆元を増刷することだ」
また、「子供を産むために紙幣を印刷する」ためには、中央銀行は紙幣を印刷する必要があるが、中国政府の予算から支給することができないと強調した。「現在、コロナ拡大、経済の下押し圧力、土地財政の急減のため、政府、企業、家庭にもお金がない」と述べた。
「同提案は一時的なものではなく、長年の研究と探求、国際的な経験と比較して科学的に証明されたものだ。出産奨励基金や、子供を産むために紙幣を印刷することは、一見すると非常に不思議だが、よく考えてみると理にかなっている」」とさらに強調した。
中央銀行へ2兆元の増刷を提案するという話題が、中国人の間で広く議論され、「経済学者がそのような提案をするのは理解しがたい」という声も多く聞かれるようになった。
BOコム・インターナショナル・ホールディングス(交銀国際控股有限公司)の取締役社長 、洪灝(こうこう)氏はウェイボーで、紙幣の印刷と出生率には関係がないと述べた。
洪氏は日本を例に挙げ、バブル崩壊後、狂ったように紙幣を印刷し始めた1990年以降、印刷すればするほど、収益率が下がり、出生率が下がっていることを指摘した。海外の経験では、紙幣の印刷と出生率に関係がないことが証明されており、少子化対策特別基金の設置も無駄である。
「農業社会では、子どもは財産だから出産が大事。工業社会では、効率が大事で、人口なんてどうでもいい。トレンドは変えられないのだから、増やさない方がいい」と洪氏が述べた。
注:ニラは野菜の一種であるが、根の上の部分から切り取れば、また生えるという生態にちなんで、中国共産党が中国人を弄んでいるという喩えに使われている。
(翻訳・徳永木里子)