リムパック2020に参加している各国の軍艦(イメージ:アメリカ太平洋艦隊のツイッター)

 米国の国防予算の大枠と国防政策の方針を盛った2022会計年度(21年10月~22年9月)の国防権限法が27日、成立した。「統一」を目指す中国の脅威にさらされる台湾、ロシアとの軍事的な緊張が高まるウクライナの防衛を巡る支援を強化する姿勢を鮮明にした。

 上下両院で超党派の賛成多数により可決していた国防権限法案にバイデン大統領は27日に署名した。予算総額は7780億ドル(約89兆円)で、21会計年度より5%増えた。伸び率は前の年度比0.3%だった21会計年度を大きく上回る。

 目を引くのはバイデン政権が既存の国際秩序に挑戦する能力がある「唯一の競争相手」と位置付ける中国への対処だ。

 ホワイトハウスによると、同法は約7780億ドルの国防費を承認し、米軍の軍事力を維持するだけでなく、対中国で最前線を担うインド太平洋地域で軍事施設の整備や軍事演習などの費用に使う基金「太平洋抑止イニシアチブ」の予算額は、創設した21会計年度の3.2倍の71億ドル(約8200億円)を計上した。

 一方、対ロシアも重点項目だ。ロシアに対する抑止力強化を目的とする基金「欧州抑止イニシアチブ」にも40億ドル(約4600億円)を配分。22年早々にロシアが軍事侵攻するとの見方も浮上するウクライナの支援に3億ドル(約340億円)を費やす。

 これには、軍事費の5%増と軍人の2.7%の賃上げが含まれている。

 議会は台湾への軍事協力の拡充を促した。ハワイ沖で22年に米海軍主催で実施予定の多国間海上訓練「環太平洋合同演習(リムパック)」に台湾を招待するよう求めた。米国軍と台湾の連携を強化すること、国防部を含む米台当局者の交流を促進することなどが盛り込まれている。

 同法案が順調に可決されたことについて、台湾駐米代表処は、台湾海峡の平和と安定が深刻な課題に直面している今、同法の台湾に関する規定は、台湾の非対称戦力の推進及び台米の安全協力の強化にプラスの意味を持つと表明した。駐米代表処は台湾海峡の平和と安定の維持に対する米行政と立法部門の盤石のような支持に心から感謝すると述べた。

(翻訳・吉原木子)