米国のラジオトークショーのホストであり、弁護士、学者、作家でもあるヒュー・ヒューウィット氏はこのほど、中国共産党(以下、中共)常務委員7人の一人である王滬寧(おう・こねい)氏に言及した。あまり知られていないが、王滬寧氏は習近平氏に対する「並外れた思想的影響力」を持ち、「確実に中国で最も注意すべき人物」であるという。
ヒューウィット氏は、16日付の米紙ワシントン・ポストで、ライオンズ(N. S. Lyons)というペンネームの作家が米誌「パラディウムマガジン」で発表した「王滬寧氏に関する記事」に言及した。同記事は米下院軍事委員会のマイク・ギャラガー議員(共和党・ウィスコンシン州選出)をはじめ、米国の国家安全保障の専門家の間でも回覧されている。
王滬寧氏は今や中共のトップ「イデオロギー理論家」として、中国の強国夢、反腐敗運動、一帯一路構想、戦狼外交、ひいては習近平思想を含む習氏のすべての象徴的な政治概念を提供した人物である、とライオンズ氏が明かした。つまり、王滬寧氏は中国の将来の政策を策定する本当の責任者であり、自分の考えを実行に移しているという。
同記事では、習氏の重要な行程や会議の写真に、よく見ると王滬寧氏がしばしば写っている。彼はまた、習氏の前任者である江沢民政権の「3つの代表」や胡錦濤政権の「和諧社会」の推進役でもあった。
王滬寧氏は上海市に生まれ、復旦大学で教職に就いた。1995年、中共の上海閥(江沢民派)の大物である呉邦国と曾慶紅の強い推薦で、江沢民に抜擢されて北京に昇進した。それ以来、彼はかつての人間関係をほとんど断ち、出版や講演をやめ、外国人と絶対に話し合わないという厳しい方針をとっている。「この入念に作られた黒いベールの下で、西側諸国では王滬寧を知る人はほとんどいない」
王滬寧氏が現在最も影響力のある「公共知識人」であると、ライオンズ氏が評した。「中共の残酷な派閥争いの中で、彼が3つの政権にわたって最高指導者の高官として活躍できたのは、前代未聞の現象である」
王滬寧氏は、1989年六四天安門事件以降、徐々にグローバル自由主義に抵抗する中心人物となった。彼の主な観点は以下通りである。「中国は強力な中央集権の政党によって統治されるべきである」、「中国は文化的に統一されなければならず、そして自信を持つべき」「西側自由主義の影響に対抗するために、中国は、新しい核心価値観を創造し、マルクス主義と社会主義を、中国の伝統的な儒教的価値観と法家(ほうか)思想、西側諸国の国家主権と権力の最高理念、ナショナリズムと融合する必要がある」
時事評論家の唐青氏によると、王滬寧氏が習氏を説得し、「共同富裕」を展開し、中国の大手テック企業やソーシャルメディアを抑制し、教育関連産業を取り締まり、芸能界の有名人を弾圧してきた。しかし、これらの一連の運動は、すべて中共の存続だけを目的としており、中国の現在の問題を解決できない。というのも、「マルクス主義と中国の伝統的な価値観は相容れない」からである。
「中共は自らの滅亡を最も恐れており、党の存続のためにあらゆる手を尽くしている」と唐青氏が述べた。「共同富裕」などの政策は一時効果が現れたとしても、後の禍を顧みない急場しのぎの危険な手段に過ぎず、自らの滅亡を加速しているだけだという。
(翻訳・徳永木里子)