蔡總統參香「覆鼎金保安宮」(中華民国總統府、CC BY 2.0 via flickr

 ロイター通信の特集記事「T‐Day: The Battle for Taiwan(台湾戦役)」によると、中国共産党(以下、中共)の台湾に対するスパイ戦は、国防システムだけでなく、蔡英文総統の側近警護隊(国防部警衛大隊)にまで浸透しているという。

 「中国のスパイが台湾軍に潜入したことを示す文書」と題し、最初に謝錫璋(しゃ・しゃくしょう)の「中共最大のスパイ事件」から始まり、彼は1997年に香港の商人として訪台し、その後22年間にわたりひそかに台湾軍に入り込み地下スパイ組織を発展させていたと、同記事に書かれていた。

 ロイター通信は、謝錫璋氏の「中共最大のスパイ事件」に関する資料を調査する際、中共が台湾の軍人と役人の上層部の指導力を弱め、戦意を挫くため、また、ハイテク兵器の詳細を集め、台湾の防衛計画を取得するため、広範囲のスパイ作戦を展開していたことを明らかにした。

 台湾当局は、謝錫璋が2006年から台湾に諜報組織を作るよう中共軍委から指示され、会食や海外への航空チケット、現金などを対象者(台湾軍将校とその家族など)に提供するなどして対外的に組織の拡大を図り、陸・海・空軍の複数の退役将校の取り込みに成功していたことを把握している。台湾政府は今年8月に、謝錫璋を指名手配したが、彼はすでに外国に逃亡した。

 さらに、中共は蔡英文総統を守る側近警護隊にまで潜入しているとの疑惑も書かれていた。今年初め、総統の機密情報を漏らしたとして、2人の総統特殊部隊の憲兵に実刑の判決が下された。過去10年間、台湾では中尉以上の軍人と警察官が中共に協力したスパイ行為で判決を受けたケースが少なくとも21件あり、さらに9人の退役軍人や現役軍人が調査・裁判中であることが判明した。

 現在の台湾が受けている中共スパイの脅威は、主に中共当局が台湾軍内に「不忠誠な」部隊を秘密裏に構築しようとしていることに起因すると一般に考えられている。なぜなら、中共が武力を大規模に拡大し、台湾を「武力で統一」できると公言しているが、実際に台湾への侵攻を成功させることは、今でもかなり難しいからである。

(翻訳・吉原木子)