大学生のコール・シンスキーと黄色い蝶(Cole Shinsky Twitter)
テキサス州フォートワース(Fort Worth)に、ある米国人の大学生がいた。彼は人生のどん底に陥っていた。そんな時、9年前に亡くなった母親のことを、ふと思い出した。もし母がそばにいてくれたら、こんな状態の自分に対しどうしたらよいか教えてくれただろう、と思った。彼のこの思いは本当に「母親」を呼び寄せることになる。
大学生のコール・シンスキー(Cole Shinsky)はプロの野球投手で、左利きである。長期に渡るトレーニングにより彼の左肩はケガをし、野球を続けることが難しくなったため、転学の問題に直面していた。未来に不安を感じている彼は、母が子供を励ますように、彷徨っている彼の心を慰めてくれる、温かい支援が欲しかった。
コールは今ほど母を恋しく思うのは初めてだった。母が亡くなった時、彼はまだ7、8才の子供だったが、それが彼にとって、母の愛情を感じた最後だった。
そんなある日、驚くことが起こった。母の日に予想外の「訪問者」が現れたのだ。それは、一匹の黄色い蝶だった。そしてこの蝶は母親の化身であると、彼は確信した。
コールはツイッターにこう書いた。「母は生前、いつか黄色い蝶に生まれ変わると言っていた。この言葉はずっと僕の心の中に残っている。」
動物関係のメディア「The Dodo」にインタビューされたときに、コールはあの時のことを語った。「僕は叔母の家の裏庭にあるドック(湖沼にある舟溜まりのこと)で釣りをしていたところ、叔母が両手で何かをすくい上げながら、僕に向かって「誰が来たと思う?」と言った」。
最初コールは、叔母の言葉を理解できなかったし、叔母の目になぜ涙が浮かんでいるのかも分からなかった。叔母が両手を開くと、中から一匹の黄色い蝶が現れた。
蝶は飛び去るつもりが無いかのように、静かに叔母の手に留まり続けた。そして叔母は蝶をコールにそっと渡した。
蝶を飛び去らせないように、コールは慎重に掬(すく)いながら部屋に入っていった。
コールが立ち留まると、蝶は彼の左肩までゆっくり上がっていき、数分間そこで止まっていた。その後、コールは再び外に出た。蝶はさらに数分の間彼の肩に留まり続け、そして飛び去った。
コールは、蝶が彼の負傷した左肩に留まる理由が理解でき、それはまさに母親の慰めであると強く感じた。まるで優しい母親が彼に「すべてはもう大丈夫」と言っているようだった。
コールは不思議に感じたが、彼が最も必要としている時に、彼の呼ぶ声を聞いた母親が、エールを送りに来てくれたのだ。コールはツイッターでこう書いた。「驚くべきことだ!9年前からずっと黄色い蝶を探していたが、こんなに近くにいたのは初めてだ。」
今回の「独特な接触」について、コールはこう考えている。「今回母がわざわざ会いに来てくれたのは、僕に知らせるためだ。自分が今迷いの中にいることも、転校しなければならないことも、母は全部知っている。そして、ずっと僕のそばにいることを伝えたかったのだ。」
この信じられないような「親子の再会」の記念に、コールは自分の左腕に黄色い蝶の刺青をした。まるで母は永遠に彼に同行し、彼の成長を見守っているかのようで、「これは僕の守護天使」だと言う。
9年の時を越えて、コールの母親が当時の約束を果たすため、息子の元へと戻ってきた。この不思議な母の愛情のストーリーがネットで話題になり、彼のツイッターは百万の「いいね」が送られた。この親子の出来事はたくさんの人に、自分の亡くなった母を懐かしく思い出させるきっかけとなった。
このような例は、多くの伝説だけでなく、現実の出来事にも少なくはない。「人は亡くなってから7日間以内に魂が一時的に動物や昆虫に付き、家族を最後にもう一度見に戻ってくる」という伝説が、台湾では広く言い伝えられている。その動物や昆虫は、例えば猫、犬、羊あるいは蛾、トンボ、蝶などである。西洋文化では、家族が蝶に生まれ変わることには、導きと希望の意味があり、愛する人への祝福を象徴するものと考えられている。
(文・蘇 明真/翻訳・謝 如初)