「シンプソンズ」(イメージ / Pixabay CC0 1.0)

 米多数の共和党連邦議員がこのほど、香港のディズニーのストリーミングサービスから「ザ・シンプソンズ」のエピソードが削除された理由を説明するよう、ディズニーの最高経営責任者(CEO)に求める書簡に共同署名した。

 米ウォルト・ディズニーが11月初めに、香港で提供を開始した公式動画配信サービス「ディズニープラス」で、米人気アニメ「ザ・シンプソンズ」シリーズのうち、シンプソン一家が北京の天安門広場を訪れるエピソードが配信されていないことがAFP通信の報道で明らかになった。香港で中国本土と同様の検閲が行われている懸念が強まった。

 ニューヨーク・ポスト紙によると、このストリーミングサービスの一部のユーザーは、「ザ・シンプソンズ」のシーズン16の12話が見つからなかったことに気付いたという。 配信されていないのは、2005年に初放送されたシーズン16のエピソード12話で、シンプソン一家が中国を旅行し、母親マージの妹セルマが中国人の養子を迎えようとするストーリーだ。

 作中には、1989年に中国政府が学生らの民主化運動を武力鎮圧した天安門広場を一家が訪れるシーンがある。養子縁組をしようと中国に飛んだ一家が、天安門広場に到着すると、広場の前に「ここでは1989年に何も起きなかった(原文:Tien An Men Square: On this Site, In 1989, Nothing Happened)」と記された記念碑が立っている様子が描かれていたとのこと。中国共産党政権が天安門事件を人々の記憶から消そうと試みていることへの風刺だ。

 ディズニーのボブ・チャペックCEOに宛てた書簡は、下院議員のジェフ・ダンカン氏(サウスカロライナ州選出、共和党)が起草し、10日に出された。

 書簡には、「『ザ・シンプソンズ』のような風刺劇でも、ディズニーは北京の共産暴君の歴史抹殺に手を貸している。我々は隠れもないこの決定を深く憂慮している」と書かれた。

 ディズニー側が配信からエピソード12を削除したのか、中国共産党政権の指示があったのか、または最初からこのエピソードは配信されない予定だったのかは不明。ディズニーも香港政府も、メディアの取材には応じていない。

(翻訳・吉原木子)