脱北者の一家4人がこのほど、中国東北部の吉林省白山市長白朝鮮族自治県から、北朝鮮工作員に麻袋に入れられて強制送還された。
脱北者が運営する韓国のインターネットメディア「DailyNK」1日の報道によると、11月10日夜、北朝鮮の国家保衛省(秘密警察・情報機関)が中国の長白朝鮮族自治県、金亨稷郡(キミョンジクぐん)から逃げ出した一家4人を逮捕して連れ帰った。脱北者は麻袋に入れられて船に乗せられ、同県から川を渡った金貞淑郡(キムジョンスクぐん)まで秘密裏に移動させられた。当時、北朝鮮側の国境は厳しく封鎖されている。一家が死刑を言い渡されて政治犯の収容所に拘束され、「犬や豚よりもひどい生活をさせられる」可能性が高いと考えられている。
この一家は国境で密輸業を営んでおり、北朝鮮の国境警備隊の兵士と良好な関係を築いたという。しかし、最近では国境沿いに障壁や高圧線が設置されたため、彼らの生計が絶たれていた。10月1日未明、一家は睡眠薬を混ぜた食べ物を国境警備隊員に渡し、薬が効いた隙に鴨緑江(おうりょくこう)を渡り、中国の取引先の家に逃げ込むことに成功した。そこから韓国への逃亡を計画していたが、叶わなかった。
一家が脱出した後、金正恩総書記は激怒し、国家保衛省を批判し、中国に3人の逮捕チームを派遣した。同報道では、中国政府が逮捕に協力していたかどうかについては言及していない。北朝鮮の国家保衛省は以前、中国当局に捜査協力を要請していた。長年にわたり、中国に逃れた多くの脱北者は、中国の警察に逮捕され、北朝鮮に送還されている。
北朝鮮では、脱北者は反逆罪だと見なされ、北朝鮮に返された場合、ほぼすべてが死刑になる。中国側が脱北者を引き渡した初期、北朝鮮軍は、針金と大きなフックで脱北者の鎖骨に穴を開け、脱北者全員を針金でまとめて縛り、手錠をかけて連れ帰っていた。中には川を渡ったところで射殺された脱北者もいた。
脱北者に対する北朝鮮軍の処置があまりにも残酷で、国際社会からの反発を招いた。その後、北朝鮮は徐々に公開処刑を減らしていった。しかし、多数の脱北者の家族によると、捕まった脱北者の運命は今でもほぼ変わらないという。
(翻訳・徳永木里子)