(イメージ / Pixabay CC0 1.0)

 日常生活において、不満を口にする人によく出会います。両親の待遇差や仕事の忙しさ、共感してくれない友人、さらには雨が降ってきたこと、などなどのことに対する不満がどこにでもあるものです。しかし、そんな「不満」こそが最悪の感情の一つで、自分を「闇」の状態にし、体調を崩すだけでなく、周りの人をも遠ざけてしまいます。

 アメリカの牧師ウィル・ボウエン(Will Bowen)氏は、著書『もう、不満は言わない(A Complaining Free World)』の中で、「不平不満ばかり言っている人は、周りの人から孤立してしまうことがある。そんな人にエネルギーを消耗されてしまう事に気づいたからだ。愚痴は毒だ。意志を破壊し、自分の価値を下げ、心と体を破壊し、熱意を削る。運命に文句を言うよりも運命を変え、人生に文句を言うよりも人生を改善する方が良い」と述べています。

 中国語には「相由心生(相は心から生じる)」という言葉があります。ここでいう「相」とは「外見」だけでなく、自分を取り巻く環境のことも指しています。心の中が悲観的でネガティブな考えでいっぱいになっていると、周りもネガティブになり、争いが絶えないように見えてしまいます。一方、心の中は喜びとポジティブな考えで満たされていると、周りも次第にいい状態になってきます。

 『もう、不満は言わない』には、文句をやめて運命を変えた人の例があります。

 ある作家が出張中に、偶然にも特別なタクシーに乗りました。このタクシーの運転手は清潔な服装で身を纏い、車内もとてもきれいでした。

 作家は席に着くとすぐに、運転手から美しいカードを渡されました。カードには、「フレンドリーな雰囲気の中で、最も早く、最も安く、最も安全で、お客様を目的地にお連れします」と書かれていました。

 運転手は「すみません、飲み物はいかがでしょうか?」と声を掛けました。

 作家は驚いて、「この車には飲み物もあるのですか?」と尋ねました。

 運転手は笑顔で、「ええ、コーヒーだけでなく、さまざまな飲み物やさまざまな新聞も用意していますよ」と答えました。

 作家は「では、ホットコーヒーをいただきます」と言いました。

 運転手は、近くにあった魔法瓶から温かいコーヒーを注ぎ、作家に渡しました。そして、新聞社の名前とラジオ局の番組表が書かれたもう一枚のカードを作家に渡しました。

 目的地に向かう途中、運転手は、車内の温度は大丈夫ですか、目的地により近い道があるのですがいかがですかなど、作家に親切に聞いてくれました。暖かいサービスを受けた作家は暖かい気持ちになりました。

 運転手は作家さんに語りました。

 「実は最初、私の車にはこのような充実したサービスはありませんでした。私も他の人と同じように、文句を言うのが大好きで、悪天気や安い収入、ぐちゃぐちゃになった道路の渋滞など、毎日ひどい目にあっていました。そんなある日、たまたまラジオで聞いた話が私の見方を変えました。そのラジオ番組には、モチベーションを高める成功の教祖、ウェイン・W・ダイアー(Wayne Walter Dyer)博士が出演し、自分の新刊を紹介しました。今でも覚えているその本は、『小さな自分で一生を終わるな(You’ll See It When You Believe It)』という名称でした。

 この本では、「不平不満をやめること、日常生活での不平不満をやめることが、誰をも成功に導く」という考えに着目していました。今の悪い状況は、実は自分の不平不満が原因だということに、ふと気づかせてくれました。そこで私は、文句を言うのをやめて、変わろうと思いました。

 1年目は、乗客の皆さんに笑顔を振りまくだけで、収入が2倍になりました。

 2年目には、乗客の好き嫌いをすべて心の中で受け止め、安心感を与えたことで、再び収入が倍増しました。

 3年目の今年、私は自分のタクシーをアメリカでも数少ない5つ星のタクシーの一台にしました。収入だけでなく、上昇したのは私の人気です。今では、私のタクシーに乗るには、事前に電話で予約しなければならなくなりました。そしてあなたは、実は私が予約したお客さんの所に向かう途中でついでに拾った乗客なのです」

 運転手の言葉は、作家を驚かせました。作家は、実は日常生活の中で文句が多いのではないだろうかと、自分のことを振り返りました。そして彼は、自分を変えようと思うようになり、あの運転手のことを本に書くことを決めました。

(翻訳・玉竹)