(写真合成:看中国/Vision Times Japan)

 イギリスの週刊新聞であるエコノミストの14日付の記事によると、中国共産党政権は、融資、合併、ファンドなどの金融手段を用いて、一般市民が気づかないうちにテクノロジー企業やその他の民間企業の持ち株を増やしており、その勢いはとどまるところを知らないという。

 同記事では、中国互聯網投資基金(CIIF)は、世界中のベンチャーキャピタルの垂涎の的である投資ポートフォリオを持っているという。ソーシャルメディアグループティックトック(TikTok)の北京にある親会社バイトダンス(ByteDance)とウェイボー(Weibo)の一部を所有しており、同業界のトップ企業がならぶ投資リストは世界有数のテック投資ファンドと勘違いさせられる。

 さらに衝撃的なのは、これらの投資案件の条件が信じられないほど良いことだ。CIIFはバイトダンスの子会社に1%の株式を保有することで、その子会社で3人の役員のうち1人を任名する権利がある。CIIFはニューヨークの上場企業であるウェイボーとも同様の取引を行い、150万ドル(約1億7千万円)の資本で同社の1%の株式を保有している。さらに興味深い現象は、これらの企業は資金の需要はほとんどなく、1,000億元(約1兆7千億円)の資金計画を持つCIIFは、その投資が大きなリターンをもたらすかどうかを気にしていないようだ。

 エコノミストは、設立からまだ5年しか経っていない同社が通常の投資ファンドと異なっていることや、CIIF自体がインターネット監視機関として強い権力を持つ中国国家インターネット情報弁公室(CAC)に大部分を所有されていることなどを理由に挙げている。このシナリオをアメリカに置き換えてみると、米国連邦通信委員会(FCC)がフェイスブックやツイッターなどのテック大手の株式を格安で保有し、大規模に役員を任命できるうえに、さらに政府が適切と考える方向に運営を誘導することができるという構図だ。

 記事では、CIIFの巨額の投資は、中国共産党における新しいタイプの国家資本主義の形成を意味すると指摘した。近年、党首習近平の指示のもと、中国規制当局はテクノロジー産業の過度な影響力に対抗し、取り締まりの強化を始めた。中国共産党当局は、テック業界の慣行が共産党の中核的価値観に反していると主張している。その中で、電子商取引大手アリババの共同創業者であるジャック・マー氏などの大物経営者が屈服し、業界全体の事業モデルが上から下まで見直され、結果として中国経済の基調が変わってきた。

 中国共産党は長い間、経済をしっかりと把握し、公共投資を拡大しようとしており、その傾向は近年顕著になってきている。清華大学とシカゴ大学ブース・オブ・ビジネスの学者らが共同で発表した論文によると、政府系投資機関による中国の民間企業への出資割合は2000年の14.1%から、2019年の33.5%に急増していた。2019年には、国有企業と共同事業を設立した民間企業は2000年の4.5万社をはるかに上回る13万社強となった。

 調査会社Dealogicのデータによると、中国当局は民間企業への公共投資を増やしており、2016年の民間企業への投資額は94億米ドル(約1兆8百億円)で、2020年には1,250億米ドル(約14兆4千億円)にまで高騰した。

 このような状況の中、経済界は、中国当局が大規模な民間企業の運営に影響を与えていることに、すでに強い懸念を抱いている。広い海外シェアを持つバイトダンス社は、CIIFの投資が業務に与える影響はほとんどないとしているが、同社の若き創業者である張一鳴(Zhang Yiming)氏は最近、会社の経営権を完全に引き渡した。また、CIIFによってバイトダンスの取締役に任命された人物は、履歴書に明確なビジネス経験はなく、中国共産党の宣伝部で働いていた経験があるという。政府関連企業と協力している民間企業のある幹部は匿名で、同社の幹部は、政治的なミスを犯すことをますます恐れるようになったと話した。

 中国共産党が徐々に経済の完全支配を進める中で、資本家たちはそのイデオロギー的な指令に違反することを心配し、このような状況は投資収益率を低下させ、企業のダイナミズムを阻害する恐れがある、とエコノミストは考えている。

(翻訳・北条)