中国の著名女子プロテニス選手である彭帥(ほう・すい)氏(35歳・湖南省出身)が、元中国副首相の張高麗(ちょう・こうれい)氏による性的暴行を受けたと告白した後、消息不明になったことをめぐって、国際スポーツ組織やテニス界の複数の選手が相次いで声を上げている。国際オリンピック委員会(IOC) のディック・パウンド委員は、IOCが2022年北京冬季五輪の開催国に強硬な態度を取る可能性があると述べた。
各国選手が調査を呼び掛け
複数のメディアによると、女子プロテニス協会(WTA)、国際テニス連盟(ITF)が彭帥氏の事件に対して、相次いで声明を発表した。国際的な知名度がある選手たち、女子プロテニスの大坂なおみ選手(日本・大阪出身)、セリーナ・ウィリアムズ選手(アメリカ・ミシガン州出身)、男子プロテニスのノバク・ジョコビッチ選手(セルビア・ベオグラード出身)、ロジャー・フェデラー選手(スイス・バーゼル出身)、アンディ・マリー選手(イギリス・スコットランド出身)、ラファエル・ナダル選手(スペイン・バレアレス諸島州出身)を含め、彭帥選手のために声を上げ、全面的な調査を呼び掛けている。
国際オリンピック選手委員会は20日、「世界各地の選手たちと共に、我々は過去3度もオリンピックに出場した彭帥選手の境遇を非常に心配している」との声明を発表した。
同日、IOCのディック・パウンド委員はロイター通信とのインタビューで、「我々がどこまで進むかわからないが、IOCが継続的にこの事件に注目していくと確信している」と述べた。
弁護士出身のパウンド委員は、世界の人々が彭帥氏の境遇に憤慨しているとし、「中国当局が早急に賢明な方法で解決しなければ、収拾がつかなくなる可能性がある」と述べた。同氏はまた、IOCがより強硬な態度を取ることを余儀なくされる可能性があることを示唆した。「情勢が北京冬季五輪開催中止にエスカレートするか断言できないが、私は疑問を持っている」
IOCのバッハ会長は一体何を?=「南ドイツ新聞」
ドイツ最大の発行部数を誇る「南ドイツ新聞」は19日、「五輪旗の下での哀れなパフォーマンス」と題する評論記事を発表し、IOCと会長のバッハ氏は彭帥事件のために、何をしたのかと詰問した。
記事では、「IOCは今まで何もしてこなかった。IOCのバッハ会長は自分の態度をずっと表明しておらず、彼の忠実な部下である選手委員会のカースティ・コベントリー委員長も同様に何も言っていない」、「IOCのバッハ会長にとって、お金と名誉が得られるところにIOCがある。中国企業と高価なスポンサー契約を結び、オリンピック開催権を中国のような専制政府に委ねることは、IOCにとって全く問題にならない。IOCも主催側に最低限の人権保障を要求しない。しかし、厄介な問題が起きると、IOCは『中立』と宣言し、厄介なことを他人任せ。IOCとはいえ、こんな気の毒なものになってしまった」と辛辣に批評した。
北京は来年の冬季五輪を開催する資格があるのか=「ニューヨーク・タイムズ」
「南ドイツ新聞」の評論記事が発表された同日、ニューヨーク・タイムズは、彭帥事件は、北京が2022年の冬季五輪を開催する資格があるかどうかを見極めるタイミングだと指摘した。
同紙は、「彭帥事件はすでに重大事件となり、中国の政界に衝撃を与えている。批判者を弾圧し、少数民族を抑圧する政権に、再び五輪の開催権を与えるべきかが疑問視されている」と述べた。
北京冬季五輪の前に避けられない人権問題=「ル・モンド」
フランスの「ル・モンド」紙は20日、彭帥事件について、「北京冬季五輪の前に避けられない人権問題」と題する評論記事を発表した。記事では、「中国共産党政権は国際大会を積極的に主催する一方、時代遅れの手段を使って、政権運営を妨害する選手たちを黙らせている」と述べた。
同紙はまた、奴隷にされることに甘んじない人々を「失跡させる」のは、中国共産党(中共)の典型的なやり方であり、彭帥事件は中共政権がいかなる代価を払ってでもその政府要人をかばうことを証明していると述べた。
彭帥事件の経緯
中国・湖南省出身の女子プロテニス選手彭帥氏は3日未明、ウェイボー(微博)で、自分が張高麗元副総理から性的暴行を受けたと暴露した。文章は掲載されてからわずか20分で削除されたが、世界に広まった。その後、彭帥氏のアカウントは閉鎖され、テニスなどのキーワードも使用禁止語となり、彭帥氏本人の外部との連絡が途絶えた。
中共公式メディア「環球時報」の胡錫進(こ・しゃくしん)編集長は北京時間20日深夜、彭帥氏が20日夜、コーチや友人とレストランで食事している様子が映った2本の動画をツイートした。胡錫進氏はまた、彭帥氏は現在自由であり、自宅で邪魔されたくないと主張しているが、外界はこの言い方を疑問視している。
因みに、彭帥(35)氏は中国テニス界の重鎮であり、2013年ウィンブルドン選手権と2014年全仏オープン女子ダブルスの優勝者でもある。
(翻訳・吉原木子)