彭帥(ほう・すい)さん事件が世界で注目される中、中国共産党(以下、中共)政府は対外的に世論操作を尽くし、対内的には関連情報を厳しく封鎖している。しかし、中国共産党(以下、中共)中央政治局常務委員が犯罪に関与しているかどうかという問題は依然として注目されており、この問題を避けていた習近平氏が脚光を浴びるようになっている。

 責任追及や疑問視から逃れるため、中共当局は様々な方法で彭帥さんの公の場での姿を見せようとしている。21日、彭帥さんは国内ジュニア大会の決勝戦の開会式に姿を見せ、また、国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長とビデオ通話で話し、彼女の現状を外部に伝えた。

 バッハ会長との30分間のビデオ通話の中で、彭帥さんはIOCが自分の健康状態を心配してくれたことに感謝し、自分は現在、安全で元気であり、北京の自宅にいると述べ、外界に自分のプライバシーが尊重されることを希望したとIOCは発表した。

 しかし、不思議なことに、IOCはその30分間のビデオ通話を公開しなかった。さらに、そのビデオ通話で、バッハ氏には中国のIOC委員である李玲薇(り・れいび)氏が同行していたため、中共が監視役を派遣したのではないかと疑われている。

 彭帥事件で中共に味方したIOCの不名誉な役割への疑問に加えて、バッハ氏の今回の通話は、彭帥さんが張高麗(ちょう・こうれい)氏を告発したことの謎を解くものではなかった。米国一般大衆紙「USAトゥデイ」をはじめとする欧米のほとんどのメディアは、張高麗氏の性的暴行疑惑に言及することを忘れずにこのニュースを報じた。

 「北京之春」誌の元編集長である胡平(こ・へい)氏がツイッターに掲載した分析文には次のように書かれている。北京が国際的な圧力から逃れるのは非常に簡単なことだ。それは張高麗氏が彭帥さんに不倫関係を強要したかどうかを調査すればいい。現在、中共のプロパガンダ手段の唯一の効果は、張高麗氏のスキャンダルを彭帥さんの安全への懸念に変え、張高麗氏に向けられるべき飛び火を、彭帥さんの制御を命令できる唯一の人物である習近平氏に向けられるようにすることである。そして、今後、国際社会がこの問題で北京をボイコットするようなことがあれば、その結果を背負うのは習近平自身である。

 人権活動家の楊建利(よう・けんり)氏は、ボイス・オブ・アメリカとのインタビューで、習近平氏は苦境に陥っているが、張高麗氏を解決することは習近平にとって実際には難しいことではなく、国際世論が高まっていても、習近平氏が問題解決に乗り出すことで、自分の個人的な威信を高めることができると分析する。一方で習近平氏は、この問題を解決すれば、より多くの「彭帥さん」が出てきて、中共の高層を直接告発し、中国のMetoo運動が中南海にまで及ぶのではないかという心配がある。これが習近平氏がなかなか手を出せない理由であると述べた。

(翻訳・吉原木子)