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 中国は、新型コロナウイルス感染症(武漢肺炎、COVID-19)の発生地であり、「ゼロ・コロナ」という厳しい政策をいち早く実施する国である。今の状況を見ると、防疫政策を最も遅く緩和する国となる可能性もある。これに対し、米国の生物医学の専門家である賀斌(が・ひん)博士は、新型コロナウイルスの「感染者ゼロ化」は実現不可能であり、中国共産党(以下、中共)が一方的に「感染者ゼロ化」を追求するのは、面子を立てるだけの「メンツ・プロジェクト」だと述べた。

 中共当局の公式データによると、10月以降、中国では1,000件以上の感染例が記録されたという。総数としては多くないが、21省に分布しているため、感染が広範囲にわたっていることを示している。

 中共の「ゼロ・コロナ」政策によって、当局は1つの地域で1件だけの症例が発生しても、最高レベルの厳しい封鎖措置を講じる。その結果、数十万人が自宅に閉じ込められ、生活や仕事に支障をきたしている。

 賀博士は、「後3か月で、冬季オリンピックが開催されるが、中共は本当に感染者をゼロにすることができるのだろうか。無理だと思う」とし、「世界が新型コロナウイルスを流行病だと認識しつつある中、中共はたえずにスローガン政治を行うため、中国人はもはやコロナの操り人形となっている。隔離をしなければならないし、ワクチンも打たなければならない。中共の感染症対策に関するすべての動きは政治のため、感染者のゼロ化や貧困の撲滅は、いずれもメンツ・プロジェクトだ」と述べた。

 同氏はまた、中共の現在の防疫対策は「感染症経済」の一種となっており、実費負担の強制隔離とPCR検査から住民の生活用品の買いだめの示唆まで、いずれも地方政府に経済的利益をもたらしている。「感染症経済」は今、政府が最も儲かる方法となっているという。

 米シンクタンク「外交関係協会」の世界衛生問題上級研究員である黄延中(おう・えんちゅう)氏によると、中共は今も、ワクチンが開発されていなかった1年前同様の「ゼロ・コロナ」政策を採用している。その重要な一因は、中共政府はコロナワクチンの感染予防の効果に期待していないからだという。「『ゼロ・コロナ』政策というのは、陽性判定が1件だけでも受け入れられないという意味だが、実は、最も優秀なワクチンでも感染を完全に防げない」と同氏は述べた。

 同氏はまた、中共は自分の功績を国民に売り込む際、政治的とイデオロギー的なジレンマに陥っているとし、「ゼロ・コロナ政策は、中国が新型コロナウイルスに対して、どれだけ成功したかを示しながら、中国の政治体制の優越性を宣伝している。このような政策を諦めれば、感染者数が次第に増えるため、国民は政府に疑問を抱くようになるだろう」と述べた。

 以下の例を挙げて、中共の「ゼロ・コロナ」防疫政策の厳しさを説明する。

1、通行人がホテルに入って道を尋ねただけとしても、ホテルがその後、感染者が現れたら、その通行人も2週間の隔離をせざるを得ない。

2、ある高速鉄道の乗務員は、後で感染が確認された乗客と濃厚接触歴があるため、乗務員が勤めた車両に乗った全乗客はPCR検査を受けなければならない。

3、上海のディズニーランドパークでは、観光客の中に感染者がいるため、当局がパークを閉鎖し、3万人以上の職員と観光客がPCR検査を受けるまで帰らせないようにした。

 世界の多くの専門家が中共の感染予防対策に疑問を呈し批判をしているが、中共はその政策を変えるつもりがないようだ。中共指導層に助言する一部の専門家らも、「ゼロ・コロナ」政策を終わらせるつもりもないようだ。

 中国国家衛生健康委員会専門家グループ長の鍾南山(しょう・なんざん)医師は最近のインタビューで、「新型コロナウイルスワクチンが利用可能であっても、全世界の死亡率が2%にすぎなくても、中国にとっては依然として高すぎる。防疫政策をあまりにも早く緩和すると、高い代償を払わなければならない」と語った。これは、大規模な強制検査、交通・運輸の規制、監視、コミュニティーの封鎖が、中国人の日常生活の一部であり続けることを意味している。

(翻訳編集・吉原木子)