皆さんこんにちは、台湾海峡の緊張が高まる中、11月6日、中国大陸では「反内戦宣言」が静かに広がっています。匿名で公開された「反内戦宣言」には、大陸が台湾を攻撃してはならない理由を五つ挙げています。また、劉亜洲将軍が17年前に書いた本『金門戦役検討』の中に、台湾問題に関わる思考の内容も同時にインターネットで広く伝われています。両方とも内容が素晴らしく、強い説得力があり、発熱している中共軍官たちに影響があると思われますので、文章を整理して皆さんに報告します。

反内戦宣言

 反内戦宣言には五つの内容が含まれています。具体的には、

 第一、台湾と大陸の統一問題を平和的に解決することは、中華民族の大義(たいぎ)であり、台湾海峡両岸の指導者が、高度な政治的知恵と民族に対する責任感を持って対処すべきことです。過去の国民党と共産党の争いは、民族同士の殺し合いと無限の苦痛をもたらしました。蒋介石と毛沢東は、天下を独占するために内戦を行い、人民に塗炭(とたん)の苦しみをなめさせ、歴史的罪人となりました。鄧小平の一国二制度による祖国の平和的統一の政策は、第二世代の指導者の高い政治的知恵と歴史的責任感を示しました。

 第二、台湾の国名は依然として中国、つまり中華民国であり、法律的には外モンゴル、ウラジオストク、江東64屯を含む約300万平方キロメートルの領土を主張する権利を有していますが、内紛が起きれば中国はその権利を失ってしまうでしょう。

 第三、台湾は蒋経国元総統以降、徐々に国際基準に合わせて民主主義社会に入り、多党制民主選挙制度を採用し、教育、医療、技術、年金などの生活は中等先進国のレベルに達し、一人当たりの所得は3万ドルを超え、人々は平和で幸せに暮らしているため、我々には台湾人民を苦痛から救出する理由がなくなっています。

中華民国元総統蔣経国氏(1910年-1988年)(Executive Yuan, Attribution, via Wikimedia Commons)

 第四、台湾海峡の両岸の間で再び戦争が起こると、中華民族の活力が間違いなく損なわれ、同族同士の内戦は国際舞台で恥さらしになり、戦争を起こした人は反人類、戦争、大量虐殺などの罪で、国連などの国際機関に犯罪を追及されるようになります。第5に、中華民族復興の重要な時期に内戦を行うことは、歴史の発展に逆行することであり、台湾と大陸の平和主義者たちが達成した92コンセンサスや一国二制度など平和的統一のアプローチに背馳(はいち)することです。国中のすべての階層とすべての民族の人々が、一致団結して内戦に反対しましょう。

 この「反内戦宣告」の出所は確認することはできません。一般人か、あるいは平和的統一を主張する学者か、あるいは軍隊の高層幹部か、誰が書いたかはしれませんが、内容的には問題がなく、確かにその通りだと思います。内戦するといいことは一つもありません。誰が書いたかはともかく、内戦を反対する声が出ている事態はとてもいいことです。

劉亜洲将軍の反内戦理由

 2004年出版された『金門戦役検討』の作者・劉亜洲将軍は、1952年山西省太原市に生まれ、武漢大学外国語の英語科を卒業し、空軍上将、国防大学の政治委員として勤めたことがあります。中国では政治委員の権限が学長より大きいため、事実上の国防大学のトップです。劉亜洲氏は第3代国家主席李先念の娘婿だから、習近平を筆頭(ひっとう)にした太子党の主要人物です。劉亜洲氏は軍事小説を多数執筆しており、軍部内では人気が高い人物です。インターネットで広く伝われている『金門戦役検討』の中に、台湾問題に関わる内容を下記の通りまとめました。

 劉亜洲氏は2年連続的に、関連部門が台湾を武力で攻撃できるかどうかについて検討するシンポジウムに参加したことがありますが、「朝攻撃すれば夜勝利する!」「台湾軍隊は一撃にも耐えられない、我が軍は必ず勝つ」「我が軍のミサイルは、李登輝の机を正確に命中することができる」など過激な話をして、会場ががやがや騒いでおり、みんなの心が宙に浮いているように感じて、「現在、空には衛星、地上にはレーダーがいっぱい配置されているので、衆人環視の中でどうやって福建省に部隊を運ぶのか」と質問すると、「それは簡単ですよ!7日間の長期休暇の時に、全国では大勢の人が電車で移動するので、その期間に、兵士たちに私服を着替えさせて、列車で移動すればいいでしょう』と答えた人がいたそうです。それを聞いて、劉亜州氏は苦笑することしかできなく、主催者から最後のコメントをしてほしいと言われたとき、「最大の敵は自分自身だ」と一言しか言わなかったそうです。

 劉亜洲氏は武力台湾攻撃を反対する理由を五つ上げました。

 第一、台湾の地形から見れば、大陸に近い西海岸には上陸に適した海岸がほとんどなく、一般的に海岸線から10キロ未満のところから山地や森林となっており、山には長年かけて作られた常設トーチカがあり、強力で完璧な火力が配置されているため、仮に順調に上陸したとしても、海岸線は遠い高台(たかだい)からの火力に簡単に制圧されるため、上陸地は直ちに屠殺場(とせつじょう)となってしまうから、西海岸からの上陸は無理です。上陸に適した場所は全部台湾東部海岸にありますが、東部から上陸するためには島を一周しなければならないため、海上での移動距離が倍になり、奇襲戦略の達成が不可能になり、速戦即決はなおさら不可能です。

 第二、台湾東部の軍用空港は山の中に配置され、1000メートルを超える大部分の滑走路は洞窟の中にあり、外部の滑走路は200メートル未満で、飛行機が洞窟を出てくるとすぐに飛び上がるから、核爆弾を使わない限り、ミサイルによる集中爆撃は役に立たないです。台湾の中部山脈の幅は約100キロメートルしかないため、飛行機は離陸してから西海岸まで飛んで来て参戦するには10分しかかからないです。台湾の空軍は戦闘力が非常に強く、パイロットは全員が米国で高度な訓練を受け、陸上だけでなく、海上での訓練も受け、しかも、空母での離着陸の経験もあるから、大陸の空軍に劣らない実力を持っています。

 第三、台湾は国民皆兵制(こくみんかいへい)で、兵役年齢の予備役が200万人以上あり、毎年集中訓練するため、いったん戦争が発生すると、24時間以内に召集して、編成することができ、しかも、訓練を受けずにそのまま参戦することができます。また、台湾は以前から米国から先進的な防衛兵器を大量に購入し、米軍からの直接訓練を受けています。最近はMQ9ドローンやハープーン対艦ミサイルを購入し、沿岸の丘陵(きゅうりょう)地帯の至る所に自動機関砲を密集して設置してあります。これらは驚くほどの殺傷力(さっしょうりょく)があり、解放軍の上陸に対処するには十分に余裕があります。その上、F35が導入されれば、台湾島の制空権を完全に握ることになります。

 だから、米軍が助けに来なく、周辺の同盟国が誰も参戦しなくても、大陸が上陸地点を1つ、2つぐらい確立するためには、何十万人もの犠牲者を出しながら、徹底的に戦わなければならないです。しかし、近代的な港を占領できなければ、大型の機材は上陸させることができないため、すでに上陸した兵士は降伏しなければ、全部殺されてしまいます。したがって、外来の支援がなく、台湾自国だけの軍隊でも、大陸が強力な攻撃で勝つ可能性は極めて低いです。だから、大陸の既存の軍隊の精鋭を大きく消耗させることになります。陸海空三軍にロケット部隊を加えて、膨大な死傷者を出して強力に攻撃しても、上陸戦争に勝てるとは言えません。

 第四、国際情勢から分析すると、米国と韓国には相互防衛条約があり、米国と日本には安全保障条約が結ばれているため、いったん何かあって米国が介入する場合、日米、米韓の条約が自動的に発効し、日本と韓国も共同戦力として自ずと参戦することになります。日本と韓国はアジアの経済大国だけでなく、空軍や海軍の強国でもあります。韓国の海軍力と空軍力だけでも、中国と互角(ごかく)に戦えるし、日本の自衛隊は、人数は中国より少ないですが、その実力と戦闘力は絶対に中国を超えています。さらに、最近の日米豪印同盟により、アジアの海と空の大国のほとんどが台湾の味方をしているため、いったん何かが起これば、中国は四方八方から攻撃されるでしょう。南シナ海のベトナムとフィリピンはいずれもアメリカの徹底的な同盟であり、ベトナムは中国に深い恨みを持っているでしょう。インドは国境線での戦争の復讐のために、あらゆる手段を使うでしょう。いったんインドがインド洋に海軍を出して、マラッカ海峡を封鎖すれば、中国の経済に最も重要なもの・食料や石油などの輸入が遮られ、輸出もできなくなります。こんな状態で、台湾の戦役はどうやって戦うのでしょうか。台湾全域の占領は全く不可能です。

 第五、「アメリカは参戦する勇気がない、本当に参戦すれば全滅させる」と言っている人がいますが、全く傲慢で、自意識過剰な暴言です。米国にはとっくに台湾に対する戦争計画があります。「20万人以上の中国軍が上陸した後、突然参戦して空と海での支配権を奪い取り、台湾海峡を封鎖して、台湾軍と力を合わせて、弾薬や物資の補給ができなくなった中国軍を包囲して全滅させることです。この作戦計画は、中国に極めて大きな政治的打撃を与え、大陸に残っている中国軍の戦意を大きく揺るがし、破壊することになります。

 劉亜洲氏はまた、「中国人は無意味な言葉をしたり、ほらを吹いたりすることをやめて、より現実的な話をし、本当に己を知り、敵を知って、優しい心を持って、台湾と香港の人民を本当に同胞として考えれば、祖国の平和的統一の可能性は全くないとは言えないでしょう。さもなければ、同胞兄弟が互いに敵対になり、その結末は間違いなく中華民族全体と後世(こうせい)の恥となるでしょう」と書きました。

 劉亜洲氏のこれらの話はとても理に適うもので、劉亜洲自身も太子党の中でも比較的理性な人ですが、4年前65歳で引退しました。いろんな情報から見れば、劉亜州氏は習近平に排斥されて引退しました。実は引退されたのです。劉亜洲だけでなく、太子党の中ちょっと理性があると言われる人が、みんな習近平に排斥されています。習近平を助けて反腐敗運動で大量な腐敗者を失脚させた王岐山もその中の一人です。反内戦宣告と劉亜洲将軍の反戦文章が中国で広がっていることは、多くの中国人、特に高層幹部の中に、内戦を反対する勢力があることを意味していると思います、これはとてもいいことです。今日は中国国内の反内戦について話しました。ご視聴ありがとうございました。

(李真実チャンネルより転載)