(ツイッター動画のスクリーンショット)

 中国共産党の張高麗(チャンカオリー)前副首相(75)から性被害を受けたと告発後、消息不明になったとされる著名プロテニス選手の彭帥さん(ホウスイ、35)をめぐり、国際社会やスポーツ界から中国側への疑念の声が高まっている。中国メディアは「無事」を強調する情報発信を続けているが、不透明感はぬぐえていない。

 11月19日から、彭帥さんの写真と動画がSNSに次々公開された。彭帥さんは自分が安全であることを外部に表明しているようだ。しかし、注意深いネットユーザーたちは、これはすべて彭帥さんがやむを得ない情況の下で、芝居に協力していることであると指摘し、疑問点をいくつか挙げた。

 11月19日、中国共産党の国営テレビ局中国中央電視台(CCTV)傘下の中国グローバルテレビジョンネットワーク(CGTN)の編集者である沈詩偉氏は、彭帥さんの最近の写真であると主張して4枚の写真をツイッターに掲載した。しかし、ネットユーザーは、この写真が北京の初冬ではなく、夏に撮影されたものではないかと疑問を呈している。というのも、現在の北京の最高気温は10度以下、最低気温は0度以下に達しているため、暖房をかけていても、室内の温度は半袖や短パンを着用するほど高くはない。

彭帥さんの「最近の写真」(ネット写真)

 20日から21日にかけて、中国共産党国営メディア「環球時報」の胡錫進編集長ら複数の同国メディア関係者が彭帥さんとみられる人物の写った動画を英語でツイッターに投稿した。

 胡錫進氏は20日に、「彭帥さんがコーチや友人とレストランで食事をしている様子」を撮影した2本の動画を英語でツイートし、「動画の内容から、北京時間の土曜日(11月20日)に撮影されたものであることが明らかである」と付け加えた。動画の中で話している男性は、北京のスポーツ会社で中国共産党書記をしている李暁斌氏と言われている。彼は動画の中でわざわざ11月20日の日付に言及した。その中には、別のスポーツ会社の社長である丁力氏の姿もあった。

 もう1つの動画には、丁力氏が彭帥さんとの食事の直前にレストランのドアに入る様子が映っている。レストランの入り口の扉には消毒済みの張り紙に11月?日の表記が見られる。ネットユーザーは、この動画の冒頭に、ドアの中に立っている男の1人が、制服を着た武装警察官であること指摘した。そのため、ネットユーザーたちは、20日の夜に彭帥さんらが会食する様子を撮影する前に、武装警察がレストランのほかの客を追い払ったのではないかと推測した。

 一部のネットユーザーは、このレストランは北京でとても有名で、そこで食事をするのに通常2、3時間待たなければならないと投稿した。ネットユーザーはまた、20日の昼間と平日の夕方にレストランの入り口にできた長蛇の列の写真も提供した。しかし、丁力氏が投稿した写真には、長蛇の列が見当たらなかった。ネットユーザーは、すべての客が武装した警察官によって追い払われたと考えている。

(左)平日の夕方にレストランの入り口にできた長蛇の列 (右)20日の夜の様子(ネット写真)

 また21日の朝には、胡錫進氏はツイッターで、同日に行われたとされる国内ジュニア大会の決勝戦の開会式に彭帥さんが姿を見せたという動画を公開した。このツイートは相変わらず英語で投稿されていた。胡錫進氏は21日の夕方までに、大会で後輩選手とポーズをとる彭帥さんの動画を再び投稿し、「プレッシャーの中であんなに晴れやかな笑顔を作れる女の子がいるだろうか」というメッセージを添えた。別のメディア関係者の動画では大会の看板に「2021.11.21」と書かれており、彭帥さんとみられる人物が子供たちに囲まれ、サインする動画など続々と投稿された。

 「彭帥さんが本当に安全で自由であるならば、なぜ彭帥自身が直接外国メディアのインタビューに出てこないのか」と疑問を投げかけるネットユーザーもいた。

 ネット上に掲載された彭帥さんの写真の中に、彭帥さんとカンフー・パンダやプーさんと一緒に写っている写真がある。ネットユーザーの分析によると、パンダは中国の国宝として知られており、中国語の「国宝」は「国保」と同音で、中国では「国保」は中国共産党政権の公安部の国内安全保衛局(2020年に公安部の政治安全保衛局に改称)を指しており、また、中国では今、プーさんは中国共産党総書記の習近平氏の代名詞になっており、彭さんはこれらの写真を選ぶことで、自分が現在、中国共産党の党幹部と国保警察の管理下にあることを外部に示唆しているようだという。動画の中で、彭帥さんと話している人は、まさにスポーツ会社の党書記だった。

彭帥さんとカンフー・パンダやプーさんと一緒に写っている写真(ネット写真)

 他のネットユーザーの分析によると、その動画の中には非常識なところが見られるという。北京人はレストランでの席順にこだわりがあり、社会的地位や年齢の高い順に座るのが一般的である。彭帥さん、党委員会書記、スポーツ会社の社長が最も高い地位の人で、3人で一緒に座るべきだ。しかし、党書記と彭帥さんの間には、明らかに彭帥さんよりも若い女性が座っていた。党書記が彭帥さんと話している時、その若い女性の表情は、2人の会話に介入したり、割り込んだりすることができないことを示していた。つまり彼女は、彭帥さんや党書記より明らかに地位や年齢が低いということだ。この不条理な席の手配はまったく普通の会食ではないことを示している。

(翻訳・藍彧)