(ネットより)

 中国南部の江西省上饒市で、地元当局が新型コロナウイルスの感染拡大防止のため住宅の消毒作業を行った際、ペットの犬が消毒員に撲殺されたと、香港紙明報が15日に報じた。中国ではコロナ対策でペットが殺処分されるケースが相次ぎ、ネット上で批判を招いている。

 報道によると、市内の感染者が出た地域で12日、住民をホテルに強制隔離し、各家庭を消毒する措置が取られた。ペット帯同は禁止だったため、ある住民傅さん(女性)は愛犬を自宅室内に残し、施錠して隔離先に向かった。

 ドアが開くと防護服姿の2人がリビングルームに入ってきた。1人はバールを、もう1人は黄色いビニール袋を持っていた。

 「この場で片づける必要があると指導者は言ったのか?」と1人が尋ねると、もう1人が「そうだ」と答え、コーギー犬が下に隠れているテーブルに近寄ると、バールで犬の頭を殴りつけた。犬は悲鳴を上げて別の部屋に逃げ、カメラから姿が消えた。

 この悲惨な場面をとらえた防犯カメラの映像は、コーギー犬の飼い主が13日にSNSに投稿した。

 傅さんによると、愛犬にどのような手配がされているのかについて、12日に隔離施設に入る前に何度も係員に確認して、建物の消毒作業に際して飼い犬を連れ去ったり殺したりはしないと説明されていたという。しかし、その後、傅さんが自宅の防犯カメラの映像で見た状況は、係員の話と全く違っていた。

 「犬は殴られるのをよけようとして寝室に逃げ込んだ。だから防犯カメラには映っていなかったけれど、かすかなうめき声が聞こえた。数分後、彼らは片付けたから持ち去ろうと言い、手に黄色いビニール袋を持っていた」と説明した傅さんの投稿は、その後削除された。彼女が家に帰ると、床に血の跡が点々としていて、「今もなお、私の犬が生きているのか死んでいるのかも、どこに連れ去られたのかも分からない」と言い添えた。

 傅さんがSNSにカメラの映像入りで告発すると、地元当局は13日、飼い主に謝罪したと発表した。しかし、犬を撲殺したことを「無害化処置」と表現し、更なる物議を醸した。

 江西省上饒市(じょうじょうし)の感染予防対策センターは、「ペットの犬が処分された疑いがある」というネットユーザーの主張に対し、作業員を批判・教育し、2人の持ち場から異動させたとし、防疫中の予防・管理措置に国民も理解を示してほしいと、事態の収拾に乗り出した。 

 これに対して、ネットユーザーから疑問視するコメントが殺到した。

 「上饒市で感染が発生するからって、ペットを大虐殺するのか?」
 「これは犬の問題か?不法侵入だ!」
 「これは市民のプライバシーと財産の安全を侵害したものだ」
 「『指導者の要求』を確認せずに、2人の防疫員を批判・教育するだけで、それで問題が解決されたと言えるのか」

 中国当局が厳格な新型コロナ対策の一環としてペットを殺したのは今回が初めてではない。今年9月28日には北東部の黒竜江省ハルビン市南崗区(なんこうく)で、陽性と判定された猫3匹が飼い主の同意なく安楽死されたという。飼い主は新型コロナに感染して病院に隔離されていた。

(翻訳・徳永木里子)