中国国有企業 ・河鋼集団(HBIS )(河鋼集団ホームページより)

 セルビア共和国の中部地域、スメデレボにある中国国有企業 ・河鋼集団(HBIS )のセルビア・スメデレボ製鉄所の近くにある村は赤い埃で覆われています。

 同地域は10年足らずでがんの発症率が4倍になり、住民らは工場から出た有害物が原因だと疑い、工場に解決策を求めています。工場側は解決を進めていると明かす一方で、がんとの因果関係を認めませんでした。

 台湾紙アップルデイリーの10日付によると、工場から飛んできた赤い埃は数百m離れた村を厚く覆い、村人は洗濯物を外で干せず、埃をかぶった車はお酢で拭かないと汚れが取れないといいます。

 また、ロイターの報道ではスメデレボ当局の発表によると、人口10万人を有するスメデレボは2011年のガン患者は1738人でしたが、2019年には6866人となり、大幅に増えました。

 しかし、中国工場側はロイターの質問に「私たちもスメデレボの住民であり……私たちは自分自身と子どもたちの健康を無視して、汚染された環境で働くだろうか? 」と問題を重視していると強調しました。また来年、3カ所の新生産施設が完成すれば、汚染は大幅に減らすことができると明かす一方で、がん発症率の上昇を工場の責任にするのは「正しい判断ではない」と因果関係を否定しました。

 しかし、環境保護組織Tvrdjavaの責任者 Nikola Krstic氏によると、9月の分析報告で赤い埃には大量の重金属が含まれていると明かし、「この町の空気の質はEUの基準をはるかに下回っている日が年間120日もある。 赤い埃には多くの油脂分が含まれており、肺に付着して呼吸困難を引き起こす 」と指摘しました。

 河鋼集団は、中国河北省に本拠を置く鉄鋼企業グループの国有持株会社であり、グループの2017年の粗鋼生産量は4400万トンで、世界第4位、中国国内では第2位の大手です。

 2016年7月1日、同集団は破産寸前のセルビアのスメデレボ製鉄所を正式に買収し、「HBISグループ・セルビア鉄鋼 」を設立しました。正式買収する前の6月19日、習近平総書記はセルビア鉄鋼 を訪れ見学したことがあります。中国がこのプロジェクトをいかに重視しているのか垣間見られます。

 習近平総書記が巨大経済圏構想「一帯一路」を掲げ、インフラ建設などを通して欧州での影響力拡大を図ろうとしています。 南東ヨーロッパに位置し、北にハンガリー、南東にブルガリアなどの国に囲まれているセルビアは、中国にとって隣国ハンガリーとともに、欧州の重要な玄関口として位置づけられています。

(新時代Newsより転載)