中国共産党(以下、中共)政権が確立した直後、中国が先進的な軍事技術の生産において米ソに対抗する能力がないことが明らかになった。1950年代にはソ連からの技術移転でその差が縮められ、1970年代から1980年代にかけては米欧からの技術移転で兵器技術を向上させた。しかし、文化大革命によって中国の技術開発や科学研究が阻害され、中共軍は技術を入手したものの、発展や革新する力は先進国に及ばなかった。その結果、中国は長い間、合法的な技術移転や国内のイノベーション不足を補うために、産業スパイに頼ってきた。
簡単に言えば、中国はロシアや米国から兵器技術を盗む習慣が定着している。時が経つにつれて、北京のスパイはその手法をより巧妙かつ柔軟にしてきた。米ケンタッキー大学パターソン外交国際商学部の軍事安全保障専門家、ロバート・ファーリー氏は、中共軍が全体または一部を盗んだりコピーしたりした5つの兵器および技術を紹介した。
・1960年代のJ-7戦闘機
1961年にソ連と中国の緊張した関係が頂点に達し、ソ連はこれを緩和するために新型MiG-21戦闘機の設計図や資材を中国に譲渡した。中国は最終的にソ連の設計図や資材を利用し、J-7戦闘機を作り出し、世界市場でソ連のMiG戦闘機に対抗した。1970年代に米中関係が緩和された後、中国はJ-7を米軍に売却し、米国はこれをソ連と戦うアグレッサー部隊に編入した。
・1990年代のJ-11戦闘機
1990年代には、モスクワと北京の間でいくつかの大掛かりな兵器取引が行われた。中でも最も重要なのは、Su-27戦闘機の売却、ライセンス供与、技術移転である。
北京は1996年、ロシアに25億ドル(約2820億円)を支払い、Su-27をさらに200機組み立てるライセンスを取得した。この協定では、J-11(中国の呼び名)と呼ばれる機体に、ロシア製のアビオニクス、レーダー、エンジンを輸入して搭載することが規定されていたが、輸出はできなかった。ロシアの政府関係者や防衛専門家によると、中共は105機を製造した後、2004年に突然、同機が要件に満たさなくなったとして契約解除した。3年後に中国が国営テレビでJ-11を公開し、ロシアが懸念したことが現実となった。
ロシア側の主張によると、中国側はほとんどすぐに、中国独自のアビオニクスをJ-11に搭載してライセンスの条件に違反した。中共はさらに、J-11の空母型の開発にも着手した。ロシアの技術を流用したことで、中露関係が悪化し、ロシアは中共軍による軍事移転を警戒するようになった。
・21世紀のJ-31戦闘機
中国の産業スパイがエドワード・スノーデン氏のリークによって明らかになる前から、米国のアナリストは、中共が米国のF-35に関連する情報を盗んでいるのではないかと疑っていた。 中国でステルス戦闘機「J-31」の情報が出てきた時、その可能性が現実になった。J-31は、双発のF-35によく似ているが、F-35Bのような垂直離着陸、ホバリング、前・後・横(VSTOL)飛行の能力は持っていない。
おそらくJ-31には、F-35のような高度なアビオニクスが搭載されていないと推測された。とはいえ、J-31はいずれ空母から離陸し、輸出市場でF-35と競合する可能性も十分にある。
・無人航空機
2010年、中国の無人航空機(UAV)技術は米国に大きく遅れをとっていた。しかし、今では追いつき、国際的な兵器市場で米国のモデルと競合できるUAVを生産している。なぜ中国がこんなに速く追いついたのか。
米国の情報機関によると、中国のハッカーは、米国政府やドローン製造に関連する民間企業であるゼネラル・アトミックス社など、複数のソースから技術を集めている。最新の中国製ドローンは、視覚的にも性能的にも米軍機に非常に似ており、中国の航空産業にとっては驚くべき発展サイクルとなっている。
・暗視装置
ベトナム戦争が終戦した後、米軍は暗視装置に多額投資し、兵士、装甲車、航空機が暗闇の中でも戦うことができるようになった。1980年代以降、同装置は数々の紛争で米国に大きなアドバンテージをもたらした。
中国は米軍のこの優位性をなくそうとしており、同分野のスパイ活動が行われている。米国の技術取得とサイバー窃盗のほかに、昔ながらのやり方も併用している。つまり、米国企業にいる中国のビジネスマンを利用して、米国の管理下にある輸出技術を不法に取得することである。
(翻訳・徳永木里子)