「ブラッドムーン」(イメージ / Pixabay CC0 1.0)

 11月19日に「ブラッドムーン」が見られる。「ブラッドムーン」とは、遠くから見ると赤く見られる月のこと。古代では、赤い月が出ると、不吉な予兆であり、大きな災いがやってくると考えられていた。

 今回の月食の範囲は、南米、オーストラリア、アジア、ヨーロッパの一部、及び北米などでフルプロセスが観測できる。月の全面積の95%が地球の影の中になり、「食甚(しょくじん)」の段階では月面全体が赤くなる。

 月が血のように赤くなるのは縁起が悪いと見なされ、もっとも、月食は悪い現象とされていた。そのため、この2つの天文現象が同時に起こることは、何か悪いことが起こる前兆だと考えられているが、2021年の最後の1ヶ月ほどは、どのような予兆があるのだろうか。近頃、中国で再燃している新型コロナウイルス(中共ウイルス、SARS-CoV-2)の流行は、北京から上海まで、15日間で16省に拡大している。当局による多くの厳しい管理措置にもかかわらず、流行は収まる兆しが見られない。

 歴史を見ても、「ブラッドムーン」の時期に様々な出来事が起こったことがある。

「ブラッドムーン」にまつわる伝説

 科学者の「ブラッドムーン」における説明はどうであれ、「ブラッドムーン」は、古来、東西の文明や宗教、民間伝説において、災害や戦争の予兆と捉えられてきた。

 古代中国では、『唐開元占経巻第十七』欽定四庫全集に、「月食で月が青で憂となす、赤で兵となす。黄で財産となす。白で喪となす。黒で、水となす」と記載されている。その意味は、月食の時に月の色が変わってしまうと災害が起きるということである。青色ならば飢饉、赤ならば戦争、黄ならば財産の喪失、白ならば干ばつと死亡、黒ならば疫病と洪水を意味する。ここでいう赤というのは「ブラッドムーン」を指しており、戦争や反乱などの災いが起こることを意味する。

 『唐開元占経巻第十七』にある『帝覧嬉』に、「月蝕は上より始まり、これを失道と言い、国君に当たる。下より始まり、これを失法と言い、将軍に当たる。傍より始まり、これを失令と言い、宰相に当たる」と書かれている。つまり、月食が上から始まると、国の支配者が道を踏み外し、徳が地位に見合わなくなり、国を失う、下から始まると、国が法治を失い、反乱が起こる、横から始まると、気候が乱れ、天災が起こる、という意味である。

 民間伝説では、「ブラッドムーン」が現れると、国が衰え、正気が低下し、まるで地獄に堕ちる状態になるとのこと。「ブラッドムーン」に関する言い伝えは、歴史記録からして、まったく根拠がないわけではない。

 西暦498年、南北朝時代の永泰元年4月に「ブラッドムーン」が現れ、これが中国で記録された最も古い皆既月食である。その4日後、大書記であった王敬(おうけい)は反乱を企てていた。これは「月が赤くなれば兵となす」という説を実証した。

 西暦1644年4月24日(明の崇禎17年)にも「ブラッドムーン」が現れた。同日の夜、李自成が軍を率いて北京を突破した。崇禎帝(すうていてい)は景山(けいざん)の曲がった木で首を吊り、明朝は滅亡した。

 1863年5月23日にも、「ブラッドムーン」が現れた。当時の洪秀全(こうしゅうぜん)政権は危機に瀕していた。1900年5月15日に「ブラッドムーン」が現れた頃に、「庚子の国難」が起きた。

 日本では、2011年3月の地震の前にも、「スーパーピンクムーン」が現れた。

(翻訳・徳永木里子)