中国で最近発生している広範囲の停電の原因について、世界各国のメディアに諸説ある。ドイツ在住の水利専門家である王維洛(おう・いらく)氏は10日、「希望之声」とのインタビューで、これは中国共産党(以下、中共)政権が人工的に作り出した問題であり、電気代の値上げを民衆に迫ることが目的であると考えている。

 中国複数のメディアの報道によると、昨年末には、湖南省、浙江省などの多くの地域で、20年以上ぶりとなる停電が発生した。そして今年の初め、北京では半世紀ぶりの厳しい寒さで気温が下がった際に、海淀区、朝陽区などの地域で何の予告もなしに停電や暖房の停止が発生した。同時に、上海では多くの地域で突然の停電が発生し、その他の地域からも停電のニュースが相次いでいた。電力供給不足の問題を緩和するため、中共国務院の李克強総理は8日の国務院会議で、市場で取引される電力料金の値上げ幅を政府設定した価格の10%以下から20%以下に変更するが、エネルギー消費量の多い産業の電気料金は20%の値上げの対象外とすることを発表した。

 王氏は「希望之声」に対して、「中国の電力業界を長年研究してきた私の経験から、今回の停電の原因は、電力会社が電気を供給できないのではなく、料金値上げの道筋をつけるために人為的にコントロールした結果だった。中共政権が直面している最大の問題は金不足だ。そのため、中共は国民が自ら喜んで中共にお金を渡すことを望んでいる。今回の10カ月以上続いている予告なしの度重なる停電や制限は純粋なお芝居であり、中共政権は今、ついに電気料金の20%値上げという切札(目的)を見せた。現在社会は完全に電気で支えられており、電気がなければ、社会全体が機能しないため、人々は電気料金の値上げに我慢するしかなく、それが妥当かどうかには関心を寄せていない」と語った。

 同氏はまた、「中共の停電の対象は、民間企業や外国企業であり、国有企業を停電しない。中国最大の国有企業、例えば、アルミ工場やセメント工場などの1つだけでも停電させれば、電力不足問題を即解消できる。しかし、中共はそうしない。わざと最も消費電力の少ない生活用電気をターゲットにして停電・制限するのだ。中国の生活用電量は、国内電力消費量の15%しか占めておらず、これは世界各国の中でも最も低い割合である。一方、中国の工業用電力の使用量は最も高いものの、その利用効率は常に最低であるといわれている」と述べた。

 では、中共はなぜ今年の9月20日頃から10月上旬まで停電を開始したのかについて、王氏は、「9月20日以降は中秋節で中国は大型連休に入り、続いて10月1日(中共政権の国慶節)からはさらに大型連休に入る。この2つの連休の間、人々は働かず、生産を続ける工場も少なかった。そのため、この時期の停電による産業への影響はほとんどない。しかし、家にいる人々の生活用の電気が止まってしまうと、人々は電気不足をひしひし感じてしまう。現代社会は電気がないと成り立たないため、中共政権はこの時点で電気料金の値上げを発表すると、反対意見は出ない」と述べた。

 多くのメディアが報じた中国の電力制限の原因は、オーストラリア産石炭の輸入を制限したことによるものだという。王氏はこの見方に対して、「中国は近年、毎年約41億トンの石炭を消費しており、毎年各国からの年間石炭輸入量は3億トンに過ぎず、オーストラリアの石炭の割合は非常に少なく、影響はそれほど大きくない」と語った。

(翻訳・吉原木子)