(イメージ / Pixabay CC0 1.0)

 古代四大文明のうち、他の三大文明はみな中途で滅びてしまい、黄河文明だけが生き永らえ、かつ絢爛華麗な文化を有り余るほど創出し、人類文明史上の一大奇跡をつくった。

 優勝劣敗的視点からすれば、中華文明は5千年にわたっても不敗不滅のうえ、煌びやかな文化を成し遂げたからには、きっとその内なる素因と独特なメカニズムがある。

 それならば、中華文明を存続させ、卓越した文化を創出した究極原因はいったい何なのか。

 さまざまな要因が挙げられるが、本質論から言えば、道徳の推尊、深甚な宇宙観、求道と修煉が、中華文化の特質と神髄を定め、それを存続させることができた三神器であると考えている。

 文化を創造し文明を推進する第一要素は人間である。個々の人によって家庭、集団、国家が築かれ、そして天地自然の法則に即しつつ文化が創られる。人間のすべての行為はみな思想に支配されるが、思想を左右するのは、道徳観と宇宙観なのだ。すなわち、人が有徳であれば、家庭が円満、社会が安定、かつ天地自然とも調和がとれるのである。

 中華文明の濫觴期から、倫理道徳が重んじられ、人文の始祖とされる黄帝をはじめ、堯・舜・禹や周公らの先賢たちは自ら、その範を垂れておいた。孔子以降、人徳が次第に制度化され、「修己治人」「経世済民」の重要な科目となり、人として遵うべきお約束にもなる。

 太極、河図、洛書、周易、八卦などは、天地自然を察知し、神のメッセージやコードを紐解きするツールとして、中華文明の高度を位置づける無双の神器である。それらの運用を通して、天人合一など優れた思想や宇宙観が形成された。人間を超越する神などの存在を知ることによって、人々は神を敬ううえ、礼儀や倫理道徳をより一層重んじ、天下も相応に泰平になる。

 黄帝は多くの優れた文化を創った。その中、道を求め自ら修煉することによって、求道と修煉の文化を後世に残した。たいへん意義深い偉業だった。後に、儒・釈・道の三教ができ、それぞれ異なる形式で修煉をするが、実質的には同じく黄帝より切り開かれた修煉の道を歩むのである。

 修煉をすれば、その修煉者は徳性の向上や利他的になることはむろん、天、地、人、神に対する認識も飛躍を遂げ、自らの生命を昇華させるのである。

 要するに、道徳の推尊によって人間のあるべき礎が築かれ、深甚な宇宙観によって天地神明に通ずる道が開かれ、修煉することによってその道を悟りつつ老子の言う「返本帰真」という人生の最終目的を果たすことができるのである。ただし、基礎から上層へ具体から抽象へと中国文明に隠されたこの三次元のコードは実は一体化され、相互作用しつつ中国文化の特質をなすのである。

 エジプト文明、メソポタミア文明、インダス文明の滅びた原因について、一般的に農耕の発展や過剰な牧畜によって、森林などエネルギー資源が枯渇したことが主な原因とされる。もし、中華文明的視点から見れば、破滅の原因は外因というより、むしろ人間の不徳による天罰だったと言えよう。逆に言えば、滅びた三大文明には中華文明のようなメカニズムがないのである。

 自己浄化ができ、生命の昇華が保たれる中国の伝統文化は唯一無二のシステムだ。この伝統文化は神から伝えられたとされ、いわば「神伝文化」である。もし、そうであるならば、この文化に埋められた三神器も当然神からの賜り物であるとしか考えられない。人類文明が岐路に立たされている今、中国神傳文化のメカニズムから叡智または啓発を得るべきであろう。

(文・呈工)