(イメージ / Pixabay CC0 1.0)
3月24日、来日したカナダ人弁護士デービット・マタス氏が「中国における臓器移植を考える会 (SMGネットワーク)」が主催した勉強会に参加し、海外諸国がいかにして中国共産党による人権弾圧に対抗しているか実情を語った。また、同勉強会にはジャーナリストや法律家、日本人の医師なども加わり、各方面の専門家たちが中国の人権弾圧を止める方法を検討した。
会の冒頭、SMGネットワークの代表で外交評論家の加瀬英明氏は、「台湾などには臓器移植のために中国に渡航することを禁ずる法律があるが、日本にはない。法律を整備するために、我々は日本の国会議員を動かし、日本人が違法な臓器移植を受けるために中国に渡航するのを止めたいと考えている」と述べ、日本国内における問題周知の重要性を強調した。
またデービット・マタス弁護士は、現在、イギリスにおいて開催中の「中国の強制臓器移植に関する民衆法廷」について触れた。実際に同法廷に資料の提供を行っているマタス弁護士は、日本に対して次のような取り組みを行ってほしいと提言した。
「日本は臓器移植に関する国際条約に署名しており、何らかの対策をとる責任がある。一方、日本の法律は、日本国内で行われた行為についてしか罰することができない。中国での移植ツーリズムを罰するために、法律を国際的なものにしていく必要がある」
「具体的には、臓器移植にかかわる人物を医療ビジネスから排除するような仕組みを整備したり、医療ツーリズムに参加した人物に対し厚労省へ報告義務を課すような法律を作るべきだ。また、オーストラリアでは外交関連の委員会がこの問題について調査を行い、報告書を作成した。日本の国会も同じような取り組みを行うようお勧めする」
また、中国による人権弾圧や臓器狩り問題の取材に携わるジャーナリスト、国内を代表する臓器移植の第一人者の医師、中国の難民問題に詳しい法律家など、各分野の専門家らが意見を述べた。
勉強会に参加したジャーナリストは、「日中の歴史問題を踏まえれば、日本が中国に強くモノを言うのは難しい面もある」と指摘した。また、移植医療に携わる医師や法律家は、中国で移植手術を受けたのち、日本国内でアフターフォローを受けることの難しさを論じた。しかし、日本には臓器移植手術を待ち望む患者も多くおり、実際に日本国内で臓器移植手術を受けた患者らも勉強会に参加していた。実際に家族間の生体移植を経験した橋本夫妻はこう語る。
「私たち患者にはドナーがいないというのが問題だ。臓器によっては1回の移植手術で済まない場合もある。だからと言って中国に行くことはやめてほしい」
こうしたジレンマを解決するにはどうしたら良いか。日本国民に求められているのは、まずは自ら中国の人権弾圧に加担しないよう「臓器狩り問題」について理解を深めることだ。そして、中国政府に臓器移植を今すぐやめるよう求め、日本国内における臓器移植の法整備を進めていく必要もあるだろう。
SMGネットワークは、「法改正を進めるだけでなく、中国に対して強制臓器収奪を止める声明を出すよう日本政府に促したい」と締めくくった。
(現場取材・項 内秀 / 記事作成・星野 明 / 写真・美空 光)