恒大集団の債務危機が続く中、習近平政権は直接介入していないが、万科企業、中国金茂、華潤置地などの政府系企業や不動産開発会社に対し、恒大集団の資産の一部を購入するよう要請している、と事情を知る関係者が9月28日に明らかにした。北京当局が恒大の資産を再編する中で、創業者の許家印氏の背後にある中国共産党(以下、中共)の有力家族が徐々に浮かび上がってきている。
ニューヨーク・タイムズ紙9月28日の報道によると、許氏は1996年、38歳のときに不動産会社、恒大を深セン市で設立した。巨額の借金や豪族との提携により、従業員十数名の小さな会社から、中国最大のデベロッパーへと急成長を遂げた。恒大の背後にある中共の有力家族は、温家宝一族と賈(か)慶林一族であるという。
同紙が入手した文書によると、2002年、温家宝副首相(当時)の弟である温家宏氏は、恒大の取締役の1人であるだけでなく、2番目の株主でもあったという。
許氏は、江沢民派の賈慶林一族とも密接な関係を持っている。
デズモンド・シャム(沈棟、52)氏は、最新の著書『「Red Roulette: An Insider’s Story of Wealth, Power, Corruption and Vengeance in Today’s China(和訳:赤いルーレット:現代中国の富と権力、腐敗と復讐の裏話)』の中で、2011年に賈慶林氏の娘・賈薔(かしょう)氏と婿の李伯潭(たん)氏がヨーロッパで旅行した際に、許氏が同行した時の回想を書いた。
当時、賈慶林氏は中共政治局常務委員の4番目に位置していた。許氏らはプライベートジェットでヨーロッパを旅行し、パリのパレ・ロワイヤルの裏庭にあるミシュラン3つ星の「パヴィヨン・ルドワイヤン」で、10万ドルを費やして1900年から1990年までのワインを飲んでいた。また、コート・ダジュール(フレンチ・リヴィエラ)への旅行では、許氏は香港の大富豪から1億ドルのヨットを購入することも検討していたという。
過去数十年を振り返ると、江沢民政権が官僚の支持と引き換えに汚職を容認していた時代に、許氏は権力者と資本の癒着を利用して権力を拡大していた。習氏が権力を握るようになり、高官の「白い手袋(資金洗浄のための企業や個人)」を取り締まってから、許氏は衰退し始めた。中共の支配下では、中国のほとんどの大金持ちが、このような運命から逃れられることができなかった。
賈慶林氏のほか、許氏は江派の右腕である曾慶紅氏との関係が深いため、曾慶紅一族の「白い手袋」とも言われている。
許氏は江派との結びつきが強いため、習氏は恒大を救わず、逆にその資産を国有化し、つまり自分の手に入れ、江派の財政的な生命線に大きな打撃を与えると、アナリストが分析した。
しかし、習氏にとっては、第20回全国人民代表大会(全人代)までの安定性を保つことも重要であり、恒大の破綻が投資家や消費者に与える影響をどう減少するのかは考慮する必要があるだろう。
(翻訳・徳永木里子)